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戦国異伝供書
第七十七話 諱その六

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「ではな」
「はい、それでは」
「わしは朝倉家とはこれからも手を結ぶべきと思うが」
「それでもですか」
「お主が決めよ」
「さすれば」
「ではな」
「はい、しかし思うことは」
 ここでだ、長政は父に話した。
「朝倉家は宗滴殿があってですな」
「そのことを言うか」
「若しあの方がおられなければ」
「到底か」
「はい、もたぬかと」 
 こう言うのだった。
「とても」
「それはな」
「父上もですか」
「そう思う」
「朝倉家はあの方が大黒柱であると」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「あの方がおられないとな」
「朝倉家はですな」
「どうにもならない」
「左様ですな」
「わしも人のことは言えぬが」
 それでもというのだ。
「しかしな」
「朝倉家はですか」
「宗滴殿がおってこそ戦えてな」
「強いですな」
「逆にな」 
 まさにというのだ。
「あの方がおられないと」
「どうにもならない」
「そうなる、しかもな」
「あの方はもうご高齢なので」
「何時この世を去られるかわからぬ」
「その朝倉家とです」
「手を結んだままではじゃな」
「どうなるかわからず朝倉家も」
 この家自体もというのだ。
「あのままではです」
「どうにもならぬな」
「ですからそれがしは」
「朝倉殿もか」
「織田家と手を結び」
 そしてというのだ。
「天下において生きるべきとです」
「考えておるか」
「さすれば朝倉殿は越前一国、八十万石をです」
「保てるか」
「当家の様に」
「それで朝倉殿にもお話して」
「共に生きるか、では」
 それではとだ、久政も頷いた。そうして長政に話した。
「お主の思う様にせよ」
「さすれば」
「その様にな」
「そうさせて頂きます」
「しかし。わしは織田家が今川家に勝つとはな」
 このことはとだ、久政は今度は桶狭間の話をした。
「夢にもな」
「思いませんでしたか」
「今川家は百万石じゃな」
「実高百六十万石とも言われてますな」
「兵は二万五千、四万も出せるとな」
「そうも言われています」
「対する織田家は六十万石」
 今川家の敵である彼等はというのだ。
「今川家には劣る」
「だからですな」
「そうじゃ、負けると思っておった」
「織田家は徐々に今川家に押され」
 その力の差が出てというのだ。
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