第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十七話 護州軍の進撃
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「もう漏れたか」
定康がうめくが豊地は笑みを浮かべた。
「えぇ有難いことに。龍州軍も1万は動かせます。〈帝国〉軍が抽出できる兵力は一万五千から二万、一時的にですが我々が兵力の優越を得ます。打てる手は少ないです」
「龍州軍が各個撃破を受ける可能性はあるか」「ありえません、我々はその気になれば側背を突けます、吼津を我々が奪還しようとしているとは連中は判断するはずです。兵を分けると不利、そして龍州軍に主力を投入すれば、我々が吼津を取られ、敵軍は挟撃を受ける。動かないのであれば吼津を取られる」
豊地は微笑した。
「そして時間が経てば経つほど皇龍道の防衛力は高まる。罠と分かっていてもまずは我々に一当てせざるを得ません、吼津を取ってしまえば虎城山岳地の側道などどうとでもなります」
どうであれ皇龍道の防衛線を押し上げ、大規模な築城が完成すればそれだけで〈帝国〉軍は不利になる。豊地の策は皇龍道の防衛という面では非常に優秀であった。
「第十一刻をもって作業を中止、昼飯を食わせてやりましょう。その後は午後第一刻までに臨戦配置でよろしいかと」
豊地が視線を送る。定康は深呼吸をした後にゆっくりとした口調で発声した。
「そのようにせよ」
護州公子、守原定康が初めて実戦において発令した命令であった。
「つまり俺達はあと二刻もすれば強襲を受ける羽目になるわけだ、磨り潰されないような策はあるだろうな」
定康は緊張を紛らわすかのように豊地を試すように尋ねた。
「敵はほぼ同数です、そう簡単に敗れるものではありません」
「渡河点が一つであればの話だ。側道の防衛の為に兵力が分散している。敵は当然のように集中して運用されるのだぞ」
彼らが築城に利用している虎腕川の水源は虎城山地北部にある。古くから大街道であった皇龍道の村落に対し、材木供給源の一つとして利用されてきた河川である。
南部は虎城の山麓から続く森林に覆われているが龍虎湾を望む北部は普段は穏やかである――雨季に虎城の山麓に降り注いだ雨が流れ込む事で内王道、東沿道ほどではないが太平の世の間も執政府も駒城家も頭を悩ませ少なからぬ工費が街道整備に投じられた要因の一つであった。
川の幅はせいぜい三十間程だが虎城より材木を龍虎湾へ運び出す運河として堤防や、十数年前には大規模な浚渫がされており――これには新鋭の熱水船も性能を喧伝する為に開発者の須加原三郎太の手でほぼ無償で投じらた。
つまり、北領と違い水温は低くないが、だからとって楽に渡れるものではない。
この川の渡河点は二つ、うち一つにして最大の渡河点がこの虎喉大橋である、そして北部の沿岸る側道の一部と橋があり、幾つかの漁村を結んでいる。
大軍の交通には適さないが、こちらにも銃兵一個連隊にあれこれと付け加えた部隊を当て
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