後編
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
かり は気の抜けた声で礼を言った。
「なんか疲れてない?」
彼が不思議そうな顔をする。
「いや・・・もう大丈夫。・・・なんとか乗り切ったから。」
ゆかり は力なく答えた。
「映画の前の予告編って、無駄に長いよね。」
冷たいウーロン茶を飲んで、気持ちを落ち着けながら ゆかり は小さな声で言った。
「まあ、でも知らない映画を知るきっかけになるから、嫌いじゃないけどね。」
彼がささやき返した。
「ふーん、そこは どうでもいい・・じゃないんだ。」
「まあね。」
やがて、ビデオカメラ男とパトライト男の盗撮防止CMが終わり、ようやく映画が始まった。
明るくて勝気なヒロインは、父母と弟の4人で幸せに暮らしている。
弟はいつも白い犬を連れている。少しませた感じのしっかりした弟を見て、ゆかり は(天田君みたいだな)と思った。
その後、突然その家庭に訪れる不幸。父が務めている研究所で事故死したのだ。父の死因に疑問を持ったヒロインは、真相を知るためにその研究所の所員となる。
(な〜んか、思ってた以上に私とキャラがかぶってるよね。)
ヒロインの言動に、ついつい自分を重ねてしまう。
彼女の上司となったのは、オールバックに眼鏡で、笑えないジョークばかり言う男。所員からはそのしょーもなさにあきれられている。
(な、なんかこの人、幾月さんっぽい?)
さらに職場の先輩は赤毛のロングヘア―で仕事に厳しい女性。ヒロインとはなかなかそりが合わず、彼女に目を付けているのか、調査のために動こうとすると必ず現れてじゃまをし、叱りつけてくる。しかもこの女性、実は研究所の所長の娘であった。
(えーと、これって桐条先輩ポジション? それに、同僚のショートカットで控えめな女性は、なんだか風花みたいだし・・・)
悪の親玉である所長はサングラスで強面の男だった。(アイパッチではなかった。)
さらにその右腕となる短髪のボクシング男の登場。筋肉至上主義の脳筋男だ。
(な、何、この映画?? わざとやってんの???)
ヒロインと同時に研究所に入った同期の男性は、今 ゆかりの隣に座っている彼に似た端正な顔立ちをしていた。彼は無愛想で敵か味方かわからない謎の存在であった。しかし周りに信じられる人が誰もいない状況の中で、ヒロインが追い詰められたときにピンチから救ってくれたのは、その同期の男性だった。
それをきっかけに打ち解けて、やがて二人の間で燃え上がる恋の炎。
(待って、待って、ちょっと待って。なんなのこれ。)
熱烈なラブシーンで、ゆかり は脳みそが沸騰しそうになった。
その後、二人は力を合わせて研究所の陰謀「イージス作戦」を暴き、ついに所長との対決。罠にはめられて危うく殺されそうになったものの、所長の自業自得と思える死によって映画は終了した。
(う・・・な
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ