後編
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そう言うと、改めておもちゃを袋に戻した。
せっかくお洒落なレストランだったのに、引っ掻き回されているうちにムードも何もなくなってしまった。
食後にやれやれと思いながら映画館に戻ってくると、ちょうど何かの映画が終わったタイミングらしく、人が大勢出てくるところだった。
ゆかり はその中に、見覚えのある帽子を見つけた。
(ええーっ、なんでこんなとこに? ヤバイじゃん! 一緒にいるところ見られたら何言われるか・・・)
慌てて彼に「キャラメルポップコーンとウーロン茶買ってきて。」と言う。
「えっ。いいけど、まだ食べるの?」
彼はそう言ったものの、素直に売店の列の方に歩いていった。
ゆかりも身を隠そうとしたが、ちょうどそこに「ゆかりっち じゃねーの。」と陽気な声がかかった。
順平とクラスメートの宮本に友近。
「あ・・・ああ、驚いた。偶然だね。3人で映画観にきたの?」
ゆかり は作り笑いを浮かべながら答える。
「おおよ。今話題のSF超大作。これだけは観ておかないと流行に遅れっちまうからね。」
順平が能天気に答える。
「ポートアイランドでもやってるのに、わざわざこんなとこまで来るんだ。」
多少、嫌みのつもりで言ってみた。しかし、それに気づかず友近が気取って答える。
「ダイナミックな映像が売り物なんだから、どうせ見るなら大画面じゃなきゃね。ここの劇場のスクリーンと音響は一味違うでしょ。さすがの大迫力だったよ。」
「あいつも誘ったんだけど、今日ははずせない用事があるとかってつれないこと言うからさ、こうして3人で来たワケよ。」順平が続けて言う。
「あ、ああ、そう」
ゆかり はドキリとしてうっすら汗を浮かべながら、彼の様子を盗み見る。ちょうど彼の番がまわってきて注文しているところのようだ。
(そろそろ追い返さないと・・・)
「そういう岳羽もわざわざ新宿まで映画を観に?」と宮本が訊いてくる。
「うん、私はここでしかやってない映画を観るために来たの。」
「これから夕飯でも食べに行こうかって言ってるんだけど、なんならいっしょにどう?」
続けて友近が軽い調子で誘ってきた。
(ええい、早く帰んなさいよ!)
内心の焦りを隠して、必死に笑顔を維持する。
「悪いけど私はこれから映画観るのよ。レイトショーでしかやってなくってさ〜。夕飯は早めに食べたから・・・あっ、そろそろ始まるから行かないと。」
「そう? じゃあ遅くなるなら、気を付けて帰ってきなよ。」
順平がそう言ったところで、ちょうどエレベーターの扉が開いた。
「じゃあな」という言葉を残して3人は慌てて駆け込んで行った。
(やれやれ、なんでこう次から次へと邪魔者が・・・)
肩を落としてため息をついてるところに彼が戻ってきた。
「お待ちどう。」
「あ〜・・・ありがとう。」
ゆ
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