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ペルソナ3 ゆかりっちのパニックデート
前編
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る場合ではない。
新宿までは電車で30分程度。話をしていればあっという間だ。
車内はさほど混んではいなかったが、席は全て埋まっていた。
ドア近くに並んで立って「そういえばね・・・」と明るく話しかけたところで、「おう、坊主じゃねえか。」と低音でドスの利いた声がした。
ギョッとして目を向けると、異様に迫力のある強面のスキンヘッドがこちらに顔を向けて座っている。まるでギャングの親分のような面構えではあるが、よく見れば身に着けているのは黒い僧衣だった。
(え・・・まさか、お坊さん?)
理解に苦しんで彼に目をやると「こんなところで珍しいですね、無達さん。」と彼が声を返した。
「ちょっくら檀家さんにお呼ばれってわけよ。お前こそなんだ。デートかい?」
「ええ、まあ。新宿に映画でも観に行こうかと。」
呆気に取られる ゆかり を置いて、二人はしばし「高校生が来てはいけない夜のお店」だの「綺麗なお姉ちゃんにモテる」だのという理解不能の会話を続けた。もっとも、ほとんど一方的に謎の僧侶が話をしていて、彼は相槌を打っているだけであったのだが・・・。
二人の会話を「目が点」の状態で聞いていると、ふいに僧侶が ゆかり の方を見て
「しかしまあ、安心したよ、お前さんもちゃんと年相応の彼女がいるってわけだ。」と屈託なく笑った。
「いえ、別にそういうんじゃ・・・」
ゆかり は赤面して口をはさみかけたが、無達はおかまいなく「それで映画・・・どこで観るんだい?」と聞いてきた。
彼が映画館の名を告げる。
「あそこか・・・まあ、新宿じゃ一番大きなハコだし、洒落ててデートにはうってつけだな。」
それからごそごそと財布を取りだすと、中から1枚、何かのチケットのような紙切れを抜き出した。
「食事のサービス券だ。あそこのビルに入ってるイタめし屋も対象店舗になってるはずだ。良かったら使いな。」
「いいんですか。」
彼は受け取って券の裏表を確認した。
「どうせ貰いもんだ。無理に使わなくてもいいが、貧乏学生のデートの足しくらいにはなるなるだろ。」
「ありがとうございます。」
彼が頭を下げると無達はにやりと笑って立ち上がり、「それじゃな。遅くなっても悪さするんじゃねーぞ。」と言ってちょうど止まった駅で降りて行った。
ふたりは無言でそれを見送る。
ドアが閉まり、はっと気づけばもう次は新宿駅だった。
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