前編
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主人公の女性が、父親の事故死に疑問を持ち、真実を知るために父のいた勤め先に潜入する、といったストーリーらしい。なんだか自分の境遇と似ているところが興味を引いた。恋愛サスペンスというのも面白そうだ。評論家のつけていた評価点も悪くなかった。
しかし話題性に欠けたのか、メジャー映画と公開が重なったこともあって、目立たずにひっそりと上映されている。
「観てみたいんだけど上映館が少なくって、東京でも3、4箇所でしかやってないんだって。もう始まって何週間か経つし、そろそろ終わっちゃうんじゃないかな。ざーんねん。」
「まだやっているなら観てくればいいのに。」
話のネタくらいのつもりで言ってみただけっだったのだが、意外に彼の気を引いたようだ。
「うーん、そうだなあ。・・・一番近くても新宿かなあ。でも、わざわざ一人で映画だけ観に行くのもなんだかねー。」
「そう? じゃあその映画、つきあおうか?」
(えっ!?)
あっさり言った彼の言葉に ゆかり は固まった。
(何? えっ? 二人で新宿まで出て映画???・・・・ それってひょっとしてデートなんじゃないの?)
いきなり心拍数がはね上がる。
「あ、で・・・でも、興味ない映画に付き合ってもらうのも悪いような・・・。」
「興味はあるよ。岳羽が大ヒット映画より観たいってい言うんだから、なんだかそれも面白そうだ。」
「あっ、そ、そう? まあ、もうそろそろ終わりだと思うと、確かに観に行きたくなるよね〜。たぶんマイナーな作品だからテレビとかでもやらないと思うし〜。き、君がつきあってくれるっていうなら、足を延ばしてみてもいい・・・かな。」
焦って思わず早口になってしまった。。
(やばっ。汗が出ちゃう。赤面してないよね。)
「それじゃあ、次の土曜日だね。上映スケジュールを調べてみよう。タイトルを教えてくれる?」
ゆかり の気も知らず、彼は涼しい顔でそう言った。
こうして唐突に彼との初デートが決まったのだ。
ゆかり の父、岳羽詠一朗は桐条グループの研究所に勤めていた。優秀な研究員だったらしい。しかし10年前に研究所で起きた謎の爆発事故で、父は帰らぬ人となった。
父を失ってから母は変わってしまった。お嬢様育ちの母にとって、父の死は辛過ぎたのだろう。寂しさを紛らわせるために男をとっかえひっかえするようになってしまったのだ。
そんな母とうまくいくはずもなく、ゆかり は家を出て学校の寮に入った。温かい家庭は父の死とともに失われたのだ。
月光館学園を選んだのは、ここが桐条グループの運営する学校だからだった。父の死について何か知ることができるかもしれない、という淡い期待があった。
そんな彼女に転機が訪れる。
理事長の幾月から、特別課外活動部にスカウトされたのだ。
影時間、タルタロス、ペルソナ、シャドウ ・・
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