前編
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反応だった。それでも ゆかり は、彼を割り当てられた部屋に案内した後、(絶対に変な女だと思われた・・・)と一人で悶え苦しんだものだ。
実はその時点で、ゆかり はまだこの召喚器を使用したことが無かった。
銃型の召喚器を自分の頭に向けて引き金を引くと、脳に衝撃を与え、死をイメージさせることで、己の分身であるペルソナを呼び出すことができる。
説明を聞いてはいたが、いざという時までは恐ろしくて試してみることができなかった。そんな彼女の召喚器を先に使ったのも彼だった。
最初の大型シャドウに襲撃されたとき、ゆかり と彼は寮の屋上に追い詰められてしまった。そこで彼を守ろうとして召喚器を抜いたのだが、引き金を引くことに躊躇したことで、敵の攻撃受けて取り落としてしまった。
その時、それを拾った彼は、迷いなく自分の頭に向けて引き金を引いた。
そして、なんと大型シャドウを単身で撃破して見せたのだ。
しかも複数のペルソナを使うというチートなことまでやって見せて・・・。
それが負荷となったのか、その後しばらく彼は昏睡状態に陥り、病院に入院することとなった。
ゆかり は、守るはずの彼に逆に守られてしまったという申し訳なさと、自分に対する不甲斐なさから、責任を感じて毎日病院を訪れた。
理事長から「彼が10年前の事故で両親を亡くしている」という話も聞いた。自分も大好きだった父を10年前の事故で亡くしており、似たような身の上だ。
同情と共感。
申し訳ない気持ち、と感謝の気持ち。
あっさり召喚器を使いこなしたことに対する羨望と、自分も負けたくないという対抗心。
病室でその端正な寝顔を見守りながらも、心の中ではいろいろな感情が複雑に渦巻いて混とんとしていた。
思えばこのときから、彼のことを強烈に意識し始めていたのだ。
降りた駅の壁に、大きな映画のポスターが貼りだしてあった。
SF特撮パニックの超大作映画。何週間だったか連続で興行成績トップを続けている、今 話題の映画だ。
「あの映画、随分人気みたいね。風花が森山さんと観てきたって言ってた。すごく感動したんだって・・・。風花って、あんなに癒し系で可愛い感じの女の子なのに、こういう趣味は意外と男っぽいのよねえ。」
舞い上がっている為か、彼が無口な分、ついつい言葉数が多くなってしまう。自分があまり興味を持っていない映画の話まで口に出してしまった。
それを感じ取ったのか、
「岳羽はあっちの映画の方がいいんじゃないの?」
と、彼は興行成績を競い合っているCGアニメ映画のポスターを指さした。
「まあ、どっちもそれなりに面白そうだとは思うけど、テレビでやったときにでも観ればいいって感じかなあ。・・・実はそれよりも、他に気になっている映画があるんだよね。」
それは雑誌で紹介されていた恋愛サスペンス映画だった。
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