前編
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何を着ていこうか・・・。
もう既にかなりの時間、手持ちの服とにらみ合っている。
(あんまり気合を入れすぎるのもちょっとアレだし、かといって普段着ているような服っていうのも気を使わな過ぎな感じだし・・・)
理想を言えば、彼の前で着たことが無くて、過度に派手ではないものの目を引くところがあり、上品で かつ彼に新鮮な印象を与える服。
そんな服・・・あるわけがない。
いっそのこと新たに買いに行きたいくらいだけど、そんな時間も金銭的ゆとりもない。
もっとも彼はデート相手のファッションなど「どうでもいい」と言いかねない性格をしてはいるのだが、これはこちらの気持ちの問題だ。自分で納得できる服を身につけていれば、自信もつくし言動だって変わってくる。これはデートの成否に関わることだ。初デートに着る服は、女子にとっては戦闘服なのだ。
(あーあ、まいったなあ。これって少女漫画の「初デートあるある」そのまんまじゃない。)
ゆかり は改めてベットの上に並べられた服を眺めてため息をついた。
彼とは同じ寮に住んでいて、同じ学校に通っている。
当然、通学が一緒になる機会も無いわけではない。しかし、ゆかり は部活の朝練に出る関係で登校時間が早くて、普段は彼となかなか時間が合わない。試験期間中のように部活が無くて同じ時間帯に出るときは、風花も一緒になることが多いので、やはり二人だけになることはめずらしい。(順平はいつも遅刻ギリギリなので、大概見かけない。)
しかし、その日の朝は偶然にも彼と二人っきりになった。なんだかんだ言ってこれはレアな出来事なのだ。ゆかり の心は、このちょっとした幸運に浮き立った。
モノレールの窓から、朝日にきらめく海をいっしょに見つめていると、並んで立っているだけで胸が高鳴ってくる。毎朝見ている光景とはいえ、その朝は格別に美しい気さえした。
(まあ、車内は超満員だし、吊革につかまりながらというところもムードがないけどね。)
ゆかり は浮ついた気持ちを抑えて、彼に語りかけた。
「なんだか君を初めて月光館に案内したときのことを思い出すよね。」
彼は寡黙で決して目立つ性格をしているわけではない。それでも、ゆかり にはいつも強烈な印象を残す。
そもそも最初の出会いからしてインパクトが有り過ぎた。
「影時間」・・・深夜0時から1時間だけ存在する、特別な人間にしか体感することができない隠された時間。その影時間の中、彼は平然と寮に現れた。
整った無表情な顔、言葉数も少なく、影時間ということもあって妖しい雰囲気すら醸し出していた。
一方その時、ゆかり はレッグホルスターに銃型の召喚器を差した格好であった。事情を知らない人が見れば、「何こいつ、女ガンマン? それとも峰不二子?」といった珍妙なスタイルである。
彼は、それについてはまったくの無
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