第七章
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舌を入れて絡み合わせた、女は紗耶香の突然の攻めに戸惑った、だが紗耶香はその戸惑いに付け込んでだった。
舌を自分から動かし蛇がもう一匹の蛇に絡まる様に女の舌と絡み合わせ蠢かし唾液と唾液を混ざり合わせた。そうしてから。
舌だけでなく女の口のあらゆる部分、歯や歯と唇の間にも舌を及ばせ口の中全てを味わった、そうしてから。
唇を離し自分と女の唾液が混ざり合ったその糸を口の中に含み飲んでから戸惑ったままの女に対して言った。
「貴女も飲みなさい、そして今から楽しみましょう」
「楽しむ、ですか」
「ええ、失った恋を忘れて新しい恋を迎える為に」
こう言って女をまずはバスルームに案内した、そこで共に服を脱ぎそれからまずはバスルームで身体を重ね合わせ。
シャンパンを飲みなおしたうえでベッドに入り女の身体を、心までも楽しんだ。そうしてから自分の横で恍惚となっている女に対して問うた。
「明日はどうかしら」
「お仕事があります」
女は呆然となったまま紗耶香に素直に答えた。
「また」
「そうなのね。けれど今夜は寝かせないわ」
「また、ですね」
「そうよ、またよ」
女に顔を向け妖しい微笑で答える、今の紗耶香は一糸まとわぬ姿で髪の毛も下ろしている。腰までの黒髪は烏の濡れ羽の様で実に艶めかしい。
「楽しませてもらうわ」
「それでは」
「いいわね、今夜でね」
「今夜までのことはですね」
「全て忘れなさい。私がそうさせてあげるわ」
不思議と優しい声だった、その声で女に囁いた。
「いいわね」
「お願いします、貴女に抱かれていると」
「忘れていくわね」
「あれだけ辛かったことが」
「そうよ、今夜は快楽を貪って、その快楽でね」
「忘れることですね」
「だから心ゆくまで快楽を貪りなさい、朝までそうして」
そのうえでというのだ。
「明日からはね」
「新しい恋をですね」
「楽しみなさい」
こう言ってだった、紗耶香は女の上に覆い被さり。
彼女に快楽を貪らせ自身もそうした、それは朝まで続き。
快楽を貪り尽くしすっかり辛い失恋からその中で解き放たれて明るい顔を取り戻した彼女の笑顔を見て別れた、そうして。
紗耶香は煙草を一本出しそれを口に咥え右の人差し指の先から出した火で煙草に火を点けて吸いはじめた、その煙草を吸いながら。
紗耶香は銀座から原宿に向かった、まずは原宿駅を出たところにある喫茶店でモーニングを頼みそれで朝食を済ませて原宿に入った。まだ原宿は学校に通う若者達はいない。だがそれでも若者達は多く。
朝からそれなりの賑わいを見せていた、紗耶香はその中を一人煙草をくゆらせつつ歩きながら。
若い男女を見回していた、その中で。
クレープの出店丁度今しがた開店したばかりのそこに行って。
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