前編
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った。」
天田はおおげさな身振りで答えて、二人は一緒に笑い声をあげた。
「コロちゃん、いないの?」
菜々子が境内を見回す。
「今日は他の人が散歩の当番なんだよ。ごめんね。会いたかった?」
「うん。」と菜々子がうなずく。
「菜々子ちゃん、一人なの?」
菜々子はもう一度うなずく。
「おかあさん、ごはんつくってる。よびにくるまで、ここであそんでなさいって。」
長鳴神社の片隅には滑り台やブランコがあって、よく小さな子供が遊んでいる。
「そういえば親戚の家ってこの近くなんだっけ。」
「あそこ。くろいやね。」
菜々子が指さした。指の先に瓦屋根の古い家がある。
「そっか。それで、一人で遊びに来たんだ。」
「うん。でもひとりだとつまんない。おにいちゃん、いっしょにあそぼ?」
菜々子がせがむような目で見てくる。
先日、自分のせいで悲しい思いをさせてしまったことが気にかかっていたので、今日の菜々子の笑顔には、救われたようなほっとした気持ちになっていた。
「じゃあ、一緒に遊ぼうか。」
「ほんとに? ありがとう。」
菜々子は、また嬉しそうに笑顔を見せた。
それからしばらく、菜々子と話をしながら、滑り台やブランコや鉄棒をした。
本当に明るくて素直で、しっかりした子だ。一緒にいると、こちらの気持ちまで暖かくなってくる。
菜々子の親戚のおばさんという人が体調を崩しているらしく、お見舞いがてら家事の手伝いに来ているらしい。
普段は明るくて優しいおばさんなのだそうだが、今は具合が悪くて元気が無いということだった。
母親が忙しくしているので菜々子は一人で退屈気味だったようだが、それでも昨日は水族館に連れて行ってもらったと嬉しそうに話した。
そうして30分ほどたったころ、母親が菜々子を呼びに来た。
「あら、天田君じゃない!」
菜々子と遊んでいる天田を見て、母親は驚いて声を上げた。
「こんにちは。ちょうど、神社でばったり会っちゃって。」
天田が応えると、「遊んでくれていたの? ありがとう。」と笑顔で礼を言われた。
「また会えてうれしいわ。菜々子も会いたがっていたのよ。」
そう言われて、天田はまた顔を赤らめた。
そこで、母親は急に名案を思い付いたというように目を輝かせた。
「そうだ、天田君。お夕飯食べて行かない?」
「えっ・・・悪いですよ。そんな。」
「気にしないで。大丈夫よ、一人くらい増えたって。子供が遠慮なんかしないの。」
「僕、子供じゃないです。」
天田が少しむっとして答えると、母親は「あら、ごめんなさい。」と笑いながら、それでも「今日はカレーを作ったの。多めに作ってあるから大丈夫。」と言った。
「でも親戚の方の家なんですよね。」
「今は留守にしてるの。私達だけよ。」
「・・・でも・・・」
天田は困ったような表情
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