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ペルソナ3 追憶の少年
前編
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いうことは想像もできないほど悲しいことに思えるに違いない。
天田は元気づけるように、菜々子に笑顔を作って見せた。
「それで、ご両親がいなくて・・・その・・・今はどうしてるの?」
母親は聞きにくそうに、しかし心配げに聞いてきた。
「学校の寮に住んでるんです。月光館学園っていうんですけど、高等部の人が入っている寮があって・・・僕は小学5年生だけど特別に入れてもらってるんです。」
「まあ・・・それじゃあ一人で暮らしてるの?」
「大丈夫です。もう子供じゃないし・・・。寮の・・・高校生のみなさんもいい人ばかりで気にかけてくれるので・・・」
「そう・・・大変ね・・・」
母親は続ける言葉に困ったように考え込んだ。菜々子も重い雰囲気を感じたのか、すっかり黙り込んでしまった。
それまでの和やかな雰囲気が一変してしまい、天田は(言わなきゃ良かった)と、ばつの悪い思いをしていた。
ちょうどそんなタイミングで長鳴神社に着いた。
「あっ、ここです。長鳴神社。」
天田はほっとしたように指さす。
母親は手書きの案内図らしいものを広げて場所を確認し、周りを見渡してうなずいた。
「おかげでわかったわ。天田君、本当に親切にしてくれてありがとう。」
「いいえ。どうせコロマルの散歩のついででしたから。」
天田は菜々子からコロマルのリードを受け取った。
「それじゃあ、僕、もう行きます。菜々子ちゃん、ばいばい。」
努めて明るく菜々子に手を振る。菜々子は力なくうなずいた。
「本当にありがとうね。天田君。」
「はい、それじゃあ。」
天田は気まずさを振り切るように、思い切って背を向けると、コロマルと一緒に走り出した。
そのとき「おにいちゃん。ありがとう。・・・コロちゃん、ばいばい。」という菜々子の大きな声が響いた。
振り向いてもう一度手を上げ、その後はただ真っすぐに夕暮れ街へと駆けて行った。

その夜、天田は久しぶりに小さい頃の夢を見た。
母親と手をつないで買い物に行く。近所のスーパーでは、毎回、一つだけ天田の好きなお菓子を買ってくれた。彼はいつも、大好きな戦隊ヒーローの菓子をねだった。
その日の夢の母は、菜々子の母親の姿とダブって見えた。

天田が堂島親子と次に会ったのは、3日後のことだった。
彼は毎日、長鳴神社にお参りをしている。母の仇を討つまで、決意を鈍らせないために、願掛けとして神社に通うと決めているのだ。
その日の夕方、蝉の声の響く中、天田は誰もいない神社の境内を訪れた。
本殿に向かって無心で拝んでいると、突然に小さな子供が背後から抱きついてきた。驚いて振り向くと、「おにいちゃん。」と嬉しそうに菜々子が見上げていた。
「菜々子ちゃん!」
「びっくりした?」
菜々子がいたずらっぽい顔で笑う。
「びっくりしたー。心臓が止まるかと思
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