前編
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で非常に危険だ。ちょうど長鳴神社に現れたシャドウのように。
もっとも普通の人には影時間を体感することすらできないのだが・・・
堂島菜々子とその母親は、八十稲羽から来て、長鳴神社近くの親戚の家を訪ねるところだった。八十稲葉は温泉地として知られている田舎の町だそうだ。
本当は菜々子の父親も一緒に来る予定だったのが、直前になって急な仕事で来れなくなったらしい。
「おとうさんね。おまわりさんなんだよ。」
菜々子がコロマルのリードを引きながら言った。
「おまわりさん?」
「稲葉署の刑事なのよ。」と母親が言い添えた。
「へー、刑事さん。なんか、かっこいいですね。」
「かっこいいかあ。あなたたちくらいの子には刑事ってかっこよく思えるのね。」
「違うんですか。」
母親の言い方に引っかかるものを感じて、天田は訊き返した。
「そうねえ。地味だし、忙しいし、危険だし・・大変な仕事よ。ドラマの中のかっこいい刑事さんとは大違い。今日だって、菜々子がいっしょに来るのを楽しみにしてたのに、急に事件が起きたからって・・・」
「おとうさん・・・かっこいいよ。」
母親の言葉を遮って、唐突に菜々子が言った。
「おとうさん、わるいひとをつかまえてるんだもん。みんながなかよくできるように、わるいことしちゃだめだよってしかってるんだもん。すごくかっこいいよ。」
父親を必死に弁護する菜々子。
「そうだね。僕もすごくかっこいいと思うよ。菜々子ちゃんはお父さんが大好きなんだね。」
天田が菜々子に笑いかけると、菜々子は嬉しそうにうなずく。
「菜々子ちゃんにとってお父さんはヒーローなんですね。なんだかそういうのいいな。」
母親はくすりと笑った。
「そうねー。父親は尊敬されてなくっちゃね。ぐちを言ってたら、頑張って仕事してる人に怒られちゃうわ。・・・天田君のお父さんのお仕事は?」
「えっ・・・と。」
その問いかけに天田は少し口ごもり、そして「ウチは、僕が小さいころに離婚しちゃって・・・」と困ったようにぼそりと言った。
母親は慌てて「ごめんなさい。」と謝った。
「いいんです。気にしないでください。・・・もう、顔も覚えていないんです。」
「そう・・・じゃあ今はお母さんと二人?」
「いえ・・・お母さんは、その・・・2年前に死んでしまって・・・」
天田はさらに言いにくそうに答えた。
それを聞いた母親はひどくうろたえて、再度頭を下げた。
「本当にごめんなさい。・・・私ったら・・・無神経に・・・」
「僕、大丈夫です。気にしないでください。頭を上げてください。」
天田は母親のとりみだした様子を見て、慌てて言った。自分のことで変に気を使われるのが心苦しかった。
菜々子も心配そうな表情で見上げている。話を理解したのだろう。このくらいの子供にとって、両親がいないと
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