暁 〜小説投稿サイト〜
ペルソナ3 追憶の少年
前編
[2/6]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話

天田はドキッとした。その笑顔は、やはり死んだ母によく似ている。
「ありがとう。賢そうな犬ね。」
母親に声をかけられて、「えっ・・・いえ・・・」と口ごもってしまう。
「柴犬? ちょっと変わってるわね。」
「あ、アルピノって言うんだそうです。色素が薄くて毛がこんな色してるんです。前の飼い主の人が、アルピノは体が弱いから強く生きるようにって、虎狼丸って名前を付けたんです。虎と狼で虎狼丸。すごい名前ですよね。でも、みんなコロマルって呼んでますけど・・・。」
母に似た人を前に、緊張のあまり思わず饒舌になってしまう。
(何を一生懸命に説明してるんだ、僕は・・・)
天田は心の中で自分につっこみをいれた。
それでも母親は、にこやかにうなずきながら話を聞いてくれていた。
「おかあさん。コロマルにおやつあげたい。」
唐突に女の子が母親を見上げて言った。娘にせがまれて、母親は少し困ったように「ごめんね、今は何もないわ。」と答える。
「あっ・・・待って、それなら・・・」
天田は慌ててポケットからビーフジャーキーを引っ張り出した。
「ほら、これをあげて。コロマルのおやつに持ってきたんだ。」
菜々子は「ありがとう」と言って受け取ると、コロマルの口元に「はい」と差し出した。好物を目の前に出されたコロマルが、落ち着かなげに小さく足踏みしながら天田を見上げる。
「ヨシ! 食べていいよ。」
天田が声をかけると、コロマルは嬉しそうにビーフジャーキーにかぶりついた。
「わあー、たべたー!」
奈々子が歓声を上げる。
「本当におりこうな犬ね。ありがとうね。」
母親に礼を言われて、天田は少し赤くなって「いえ」と言った。
「ねえ、ついでで申し訳ないんだけど、道を教えてもらえるかしら。・・・長鳴神社に行きたいんだけど。」
「な・・長鳴神社、ならこっちです。」
少しどもりながら、焦って指さす。
「ちょうどコロマルの散歩のコースだから、僕・・・案内します。」
「あら、ありがとう。助かるわ。」
母親に笑顔で言われて、天田はまた耳まで赤くなった。

長鳴神社までの道筋を3人で話しながら歩いた。
コロマルの元の飼い主が長鳴神社の神主だったこと、神主が事故で死んだ後もコロマルが神社を守っていたことも話した。
そして、これはさすがに話せないが、神社にシャドウが現れたとき、コロマルは神社を守るためシャドウと戦ったのだ。それをきっかけに月光館学園の巌戸台寮にひきとられることとなった。
シャドウは人の精神が暴走して生みだされる異形の怪物だ。シャドウを生み出した後、人は無気力症と呼ばれる廃人状態になってしまう。
シャドウの多くは、タルタロスと呼ばれる謎の迷宮に集まる。しかし生まれたばかりのシャドウは、影時間に街を徘徊していることがあり、出会うと襲いかかってくるの
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ