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黒魔術師松本沙耶香 糸師篇
第五章
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「だから私もね」
「出来ますか」
「ええ、だからお店でもこうしたコインやタロットカードは売っているわ」
「魔法の道具としても」
「そうしているわ、ただ私は占いは専門ではないわ」
 それを出来てもというのだ。
「やはり占いの専門は占い師よ」
「あの方ですか」
「そうよ、嫌いではないわ」
 あの左目を常に黒髪で隠した男のことを脳裏に思い浮かべた、紗耶香はそのうえで男に先程とは違う色の妖しい微笑みを浮かべて答えた。
「決してね」
「よくお仕事も一緒になりますね」
「縁でね、ただ今回はね」
「貴女だけになりますか」
「彼は今は東京にいないわ」
「では何処に」
「インドにいるみたいね」
 南アジアの古い歴史を持つ神秘の国にというのだ。
「何でも」
「あちらですか」
「そう、だからね」
「今は、ですか」
「彼と一緒に仕事をすることはないわ」 
 働く場所があまりにも離れている、その為にというのだ。
「私にとっても少し残念なことにね」
「左様ですか」
「また言うけれど彼は決して嫌いではないから」
「あちらの方は貴女に随分とご執心ですね」
「今もね、けれどね」
「それでもですか」
「同じ渋谷にお店を持っていてプライベートでもよく会っていて」
 そうしてというのだ。
「こうしたお仕事でもよく一緒になるけれど」
「それでもですか」
「私はまだ気が向かないわ」
 嫌いではない、それは事実でもというのだ。
「だからね」
「それで、ですか」
「彼の気持ちには応えられないわ」
「断り続けておられますか」
「今のところはね、それでお話を戻すけれど」
「原宿ですね」
「その行方不明になった子達の写真と個人情報を渡してくれるかしら」
「わかりました、ではお願いします」
 男はすぐに彼等一人一人の写真と個人情報が書かれた書類を手渡した、その後は男は店を後にして。
 紗耶香はその写真と情報を飲みながら隅から隅まで読んだ、そうして頭に入れるべきことを全て頭に入れて気が済むまで飲んでから。
 店を出た、暫く歩くと一人寂しく歩く若い女がいた、紗耶香はすぐに彼女に声をかけた。
「どうしたのかしら」
「何も」
 見れば背は一六五程の黒のショートヘアの二十代後半の女だ、ボーイッシュな顔立ちをしていてすらりとした身体を地味な色のスーツで覆っている。本来は姿勢がいいと思われるが今は背中を丸めている。
 声も元気がない、その声で紗耶香に答えたのだ。
「ないです」
「そうは見えないわ、何なら飲むかしら」
「お酒は」
「もう飲んだのね」
「今まで」
「そうみたいね、お顔が随分と赤いわ」
 俯いた顔はそうなっている、耳まで真っ赤でよく見れば手もだ。相当に飲んでいることは明かである。
「それはわかるわ。ただ
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