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其の弐 蛇を宿した女
第十八話 蛇を宿した女
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 ふと、元宮は目を覚ます。
 広がるのはいつもの図書室の様子ではなく、カーテンに囲まれたベッドの上の様子。

 保健室だろうか、と元宮が体を起こそうとするが、体が重い。
 熱があるときのような怠さがあるわけではないので、何故だろうと思いながら目を開けると???


「……ん、起きたか」
「も、元宮様ぁぁあああ??」

「う、うわぁっ!?」


 死んだはずのシオンが元宮に抱きつきながら泣いている。加え、四番目も元宮の隣で寝ている。
 健全な男子高校生である元宮にとって、これはとても魅力的な事であるが、すぐにシオンを引き剥がすとベッドから退く。

 そして、自分の目に映ったシオンの姿に目を疑った。


「な、ななな、なんで……人間の足が……??」


 シオンを象徴するものである大蛇の下半身が、人間の足へと変わっている。
 それに驚いていると、シオンは苦笑を浮かべながら答えた。


「怪異は自分の姿を自由に操れるんです。だから、基本的にわたしはこの姿でいるんですよ。余程の理由がない限り、あの大蛇の足はわたしにとっても嫌なものなのであの姿にはなりません」


 穏やかな真紅の瞳。長く伸ばされた前髪。三つ編みにして結われた真っ白な髪。さらしを巻いても豊富に見える胸。

 全て、シオンのものだ。


「……い、生き返れたんだ」
「はい! 元宮様のおかげです。本当に、本当にありがとうございました」


 もう一度元宮をきつく抱きしめるシオン。対し、自身に当たる柔らかな感触に顔を真っ赤にする元宮。
 それを見て、四番目は少しながら不服そうな表情をする。


「おい、シオン。あまり少年にくっつくな。少年は私のものだ」
「な、わたしのものです! なんと言ってもわたしと元宮様の間には切っても切れぬ縁があるんですから!」
「はっ。私と元宮少年は運命で結ばれる呪いをかけられているが?」
「う、運命ですか??」


 今度は元宮を離したシオンは、元宮と四番目を結ぶ赤い糸を見て声を失う。


「わ、わたしの……大切な依代、が……」


 そう言えばそんな事になっていたのだっけか、とひとり思う元宮。
 気絶する前、四番目が言っていたことを思い出して、苦笑を浮かべる。


「でも、どうにかなってよかったです。願いを叶えてくれて、ありがとうございます。鬼神様」

「……まだ、どうにかなってないんだけどな。私達は」


 ぼそりと、呟く四番目。そこに「何か言いました?」と元宮が問うが、すぐに「なんでもない」と返されてしまう。
 不安な気持ちが少し残る中、元宮は立ち上がって歩き始める。


「じゃあ、行ってきます! 噂、変えてきますからね??」





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