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ペルソナ3 夢幻の鏡像
後編
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たは一人ではありません。」
嘆く私の声を遮ると、エリザベスは左手を上げて、彼方を指さした。
その指の先、反対側の通路からテオドアとともにあの前髪の男性が現れる
「ワイルドの力も持つ者が二人。しかもその二人は別の現実で同じ役割を担う同位存在。二人揃えば相乗効果でその力は何倍にもなるはずです。」
エリザベスは手に持った本から1枚のカードを抜きだし、私に差し出した。
「私のペルソナカードをお貸ししましょう。本来なら今のあなたには扱えない、強力なペルソナですが、あの方と力を合わせれば使いこなせるはずです。」
「わかった。やってみるよ。」
私は決意を固めてうなずくと、エリザベスのカードを預かった。

やるしか道はない。
現実に帰るには、勝つしかない。
それにあれだけ会いたかった彼が、今そこにいる。

エリザベスの言葉を信じて私は足を進めた。反対側からテオドアに促されて彼が近づいて来る。2、3歩手前でお互いに足を止めた。
「やあ。」
彼が無表情に声をかけてきた。
線の細い、端正な顔立ち。長い前髪が右目にかかりそうになっている。
夢で見たのと同じ姿だ。
「やっと会えたね。あなたのことを知ってから、ずっと会いたかったんだ。」
私はにかっと笑って、そう返した。
「そう?」
反応が薄い・・・。
「私のことは、知ってた?」
拍子抜けして私がそう問いかけると、彼は静かにうなずいた。
「夢で見たんだ。エリザベスからは、もう一つの可能性だと聞かされた。」
彼も・・・私と同じだった。
「どう思った? 自分とは別の可能性があるって聞いて。」
意気込んで質問すると、彼はため息をつくようにつぶやいた。
「どうでもいい。」
その投げやりな言葉にカチンときて、思わず声を荒げる。
「どうでもいいことないでしょ。自分の役割を別人がやってるんだよ。自分の存在意義に関わることだと思わないの?」
彼は少し驚いたような表情を浮かべる。
「そんな風に考えるんだ。すごいね。」
それから少し考えた後、私を正面から見つめると口を開いた。
「僕はずっと死ぬことなんて怖くなかった。生き続けたいとも思ってなかった。ただ死んでいないから生きていたんだ。
でも月光館に来てから仲間ができて、街でもいろんな人と出会って、みんなの生きている姿を見て・・・生き続けて欲しいと思うようになった。その為にみんなを守りたいと思った。みんなを守るためだったら、自分も生きてみたいって思ったんだ。
僕には別の可能性なんて関係ない。僕のいる現実では僕のできることをする。それだけなんだ。」
私の問いに対して真面目に考えて、誠実に答えてくれた。それはよくわかった。
それにしても、生きることに執着していないなんて、いったいどういう人なんだろう。
やはり私とは違う。
彼は私の
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