前編
[4/6]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ないということなのか。
絶対に出会うことの無い二人。
彼も私のことを夢に見たりするんだろうか・・・
「夢に見たイケメンの王子様にひとめぼれとか・・・ほんとに年頃の乙女だねえ。」
「もうっ、そういうのじゃないって。」
ニヤニヤ笑いのゆかりに、怒ったふりをする。
楽しい・・
つくづく巌戸台寮は自分の居場所だ、と思う。
まだ数カ月しか過ごしていないのに、特別課外活動部のメンバーをまるで家族のように感じる。立場や事情は違うけど、同じ目的に向かって命がけで戦っているからかもしれない。もしかしたら戦友ってこういうものなのかな。
ここに来てから、これまでの人生には何者かの意思が働いているような気がしていた。
子供のころ、突然事故で亡くなった両親。
その事故の際、自分は何かを見たような気がする。それが何だったのか、どうしても思い出せない。
なぜ自分は 薙刀《なぎなた》など習ったのか。いずれ訪れる戦いに備えるためではなかったのか。
影時間を知り、ペルソナ能力に目覚め、タルタロスを探索し、シャドウから人間を救うために戦う。自分はこの為に生まれ、この為に生きてきたのだ、という感じが日ごとに強くなる。
しかし自分以外の誰かが自分の代わりをしている世界があるのだとしたら・・・。
その役割は必ずしも自分でなくても良かったということなのだろうか。
あなたは誰?
なぜそこにいるの?
会って話してみたい・・・
そして、深夜0時。
今夜もタルタロスに集まる。
私達の学校、月光館学園の校舎は影時間にその姿を変え、迷宮の塔となる。
私達はシャドウを駆逐し、影時間を消すためにこの塔を上る。
次の満月の大型シャドウ出現までもう間が無い。今のうちに少しでも探索を進めておく必要がある。
「メンバーはどうする?」
エントランスで、真田先輩が自分を連れていけと言わんばかりの勢いで聞いてきた。
先輩はいつでもモチベーションが高い。
「じゃあ、真田さん行きますか? それから今日は順平と・・・」
「うぃーす」と順平がおどけて剣を上げた。
「あっ、私 行きたい。」
めずらしくゆかりが手を上げた。
「じゃあ、ゆかり。」
探索メンバーが決まった。
気が付けば、昨夜の夢と同じ顔ぶれだった。・・・そう、私以外は・・・
「よし、残りのメンバーはバックアップだ。いつでも出られるようにしておけ。」
桐条先輩が凛とした声で告げる。そして、私の方に向き直る。
「シャドウも手強くなってきている。慎重に進んでくれ。」
「はい。行ってきます。」
どこまで上に続いているかもわからない迷宮の塔、タルタロス。
ただ奇妙なことに、これまで探索した階層までは一気に飛ぶことができる。
そのおかげで、毎日1時間程度の影時間でもはるか上の階層まで探索
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ