前編
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るのよ。」
「ああ、ごめん。ちょっと、夢と現実の狭間に行ってた。」
ゆかりが噴き出した。
「何それ、立ったまま寝てたの?」
「えーと、かなり長いことぼーっとしてたのかな?」
ゆかりが首を振る。
「立ち止まってから1分も経って無いとは思うけど。声かけても無反応だし、どうしたのかと思った。」
ベルベットルームで過ごす時間は現実の時間とリンクしていない。
結構長くいたつもりだったが、現実ではほんの一瞬だったようだ。
「今日は部活終わったの?」とゆかりに訊いてみる。
「うん、ちょっと買いたいものがあってポロニアンモールに来たんだけど、噴水のあたりで見かけたから追いかけてきたんだ。」
ゆかりは制服なのにピンクのカーディガンでミニスカ。茶髪で首にチョーカー。かなり挑戦的な格だ。よく学校側に取り締まられないものだ。
しかし彼女にはそれが良く似合っていて可愛い。性格も明るくて活発、男子にもダントツの人気だ。
こんな彼女が弓道部などどいう落ち着いた部活で、袴を穿いて静かに弓を引いているなんて不思議だ。
一度のぞいたことがあるが、弓道姿もりりしくて格好いい。
背筋をぴんと伸ばして的を狙う姿は、真っすぐ未来を見つめる彼女の生き方そのままだ。
「なーんか今日、柄にもなく一日中考えこんでたでしょ。どうしたのかなーって、ちょっと気になって・・・ね。」
「柄にもなくって・・・私だって年頃の乙女なんだから、たまには思い悩むことだってあります。」
二人で顔を見合わせて笑いあう。
「でもここで会うのも珍しいよね。どこか行こうとしてたの?」
ゆかりに訊かれたが、下手に答えてあまり突っ込まれても説明に困るので、話の流れを変えてみる。
「ううん。もう用事は済んだんだ。えーと、これから帰ったら遅くなるし・・・どこかで一緒に食べてっちゃおうか。」
「うーん、お財布事情が・・・」
ゆかりはちょっと首をかしげたが、「ま、いいか。こういうのも何気にレアだしね。」と笑顔で明るく答えた。
「ウチの生徒で、片目が前髪で隠れたクールな人? 知らないなあ。」
定食屋わかつ で「DHC盛りだくさん定食」をつまみながら、ゆかりに前髪の彼のことを聞いてみた。
「まあ私も学校で見た覚えないんだけどね。」
問いかけてくるような表情のゆかりに、ちょっと迷ってから私は話し出した。
「実は昨日の夢に出てきて・・・それがものすごいリアルな夢だったの。顔も鮮明に覚えてる。夢のはずなのにどうしても気になる人で・・・」
「そんなにイケメンなんだー。テレビかなんかに出てる人なんじゃないの?」
「別にイケメンとは言ってないじゃない。・・・まあ、確かに二枚目だったかもだけど・・・」
やはりこちらの現実には存在していない人なのかもしれない。・・・ということは彼の世界には、私が存在してい
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