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戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
装者達のバレンタインデー
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一瞬、鋭い視線と共に眼鏡のレンズが遮光で真っ白に染まる。

緒川はいつも通りの微笑みを崩さず、話題を逸らす方向でそれに答えた。

「そうかもしれませんね。お小遣いで買ったチョコレートを、綺麗に包んでいたあの頃が懐かしいです」
「ああ。だが、今回はあの頃とはまた違った微笑ましさがある。翔からの受け売りだが、こんな父親でもまだ、マシュマロではなくチョコを貰えるとは……有難い事だな……」

男の名は風鳴八紘(やつひろ)。内閣情報官であり、翼と翔の父親だ。

八紘は書斎の机に座ると、メッセージカードを引き出しにそっと仕舞う。
その中には何枚ものメッセージカードが、大切そうに仕舞われていた。
既に古びてしまったものから、つい去年のものまで。ひらがなで書かれた『おとうさまへ』の文字は、段々漢字が使われるようになり、書体も達筆になっている。

「今年も、返事はお書きにならないのですか?」

緒川からの問いに、八紘は静かに答える。

「書いた所で、翼の心に届くかどうか……」
「……そうですか」

そう、一言だけ呟いて、緒川は口を閉じる。

彼は知っているのだ。八紘が翼からの手紙を仕舞っている隣の引き出しには同じ数だけ、出せず仕舞いになった葉書が積み重ねられている事を。

だが、口出しする事など出来ない。
これは親子の問題なのだ。部外者の自分が口を出すべきものではないのだから。

自分に出来るのは、ただ黙って見守る事だけだ。
この不器用な父と娘の関係が、少しでも良くなる日が来る事を願って……。

「ふむ……美味いな」
「お茶、淹れましょうか?」
「そうだな。慎次も座ってくれ。これからの話をしよう」
「……何の事ですか?」

一瞬固まる緒川を、八紘は真っ直ぐに見据える。

「父親である私が気付かないと思ったのか?まったく……」

呆れたような、それでいて何処か納得しているような……。
八紘の表情から、逃げられない事を悟った緒川は、彼の向かいに腰掛ける。

「それで……翼とはいつからそういう関係なんだね?聞かせてもらおうじゃないか」

緒川が席に着いた瞬間、圧迫感全開のオーラを放つ八紘。
流石の緒川の背筋にも、冷たいものが走る。

(これは……覚悟を決めないといけませんね)

この後、彼と八紘の間でどんな会話があったのか……。
それを知る者は、誰も居ない。
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