装者達のバレンタインデー
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無論、3倍返しなど冗談なのであるが……正直、彼女が言うと冗談に聞こえないのが困りものである。
というか約1名、律儀に毎年3倍返しにしているOTONAがいるのだが……。
さて、当の藤尭本人はと言うと、去年までは義理しか貰ってこなかった人間である。
いや、義理でも貰えるだけ有難いのだが、亭主関白志向の持ち主でありながら未だ一度も女性と付き合ったことのない彼にとって、本命を貰える男達は嫉妬と羨望の対象であった。
──そう、去年までは。
「朔也くん、あったかいものどうぞ」
目の前に置かれた、湯気を立てるマグカップ。
机から身体を起こし、彼女へと顔を向ける。
「あったかいものどうも」
マグカップを手に取ろうとする藤尭。
そこへ一品の、小皿に乗った菓子が置かれた。
真っ白な生クリームを固めたアイスに、小さく刻まれた苺が鮮やかな赤を放ち、添えられている。
上からは飴色のキャラメルソースがかけられており、藤尭の鼻腔を甘い香りが擽った。
「それから、甘い物もどうぞ」
「甘い物どうも……って、あおいさん!?これ、まさか!?」
友里の意図に気付き、藤尭は目を輝かせる。
「当然、本命よ。朔也くん、お返しは毎年手作りだったでしょ?お菓子作りなら、多分朔也くんの方が上手いと思うし、口に合うかは分からないけど……」
「そんな事ないよ!人生初の本命……明日は槍でも降るかもしれない」
「もう、大袈裟ね〜」
ひとしきり笑うと、藤尭はアイスに手を付けようとして……ふと、首を傾げた。
「ところで、チョコじゃなくてアイスなのはどういう意図が?」
「ん?それは……宿題って事にしておくわ」
「宿題!?」
「そう。バレンタインデーは、別にチョコレートだけを贈る日ってわけじゃないのよ。じゃ、そういう事で」
「えっ!?ちょっと!?あおいさん?」
そう言って友里は、藤尭の席を離れる。
取り残された藤尭は、友里の背中を見送ると、アイスを掬って口に含んだ。
「……ん、美味い」
凍った生クリームが口の中でとろけていく。
舌先でその感触を味わいながら、藤尭は友里の言葉の意味を考えた。
「そういや、ホワイトデーのお返しにも意味があったよな?……あれがバレンタインデーでも共通だとすると……。そういや、キャラメルにも意味があったような……。そして苺……」
二課随一の情報処理能力を誇る藤尭の頭脳がその答えを導き出すまでに、そう時間はかからなかった。
「キャラメル……苺……ッ!?えっ!って事はつまり……あおいさん……それはズルいって……」
そして、司令室の外の廊下では……。
「……ふう……意外と、緊張するわね……」
頬がほんのりと朱に染まった、友里の姿があったと
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