愛を唄う花と雪(バレンタインデー特別編)
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肌寒い風が頬を撫でる。厚着に手袋、首にはマフラーまで巻いていても、染みる北風に身を震わせる。
明日は乙女の決戦日……そう、即ちバレンタインデー。
スーパーやデパート、各種洋菓子店では多種多様なチョコレートが並び、大勢の女性客が押しかけている。
ある者は友人に。ある者は同僚や先輩、後輩へ。ある者は大切な人に、日頃の感謝や愛を込めて。
そして、それ以上に多くの乙女達は……意中の相手に、胸の内の想いを伝える為に──。
「まったく……くだらない」
もふもふとしたマフラーを口元まで上げた、眠たげな目の少女はぽそりと呟く。
立花響、16歳。やさぐれた態度の彼女もまた、この聖戦に臨む乙女の一人である。
「たかが製菓会社の売上狙いで設けられたようなイベントだ。そんなものに踊らされるなんて莫迦莫迦しい……」
すれ違い、通り過ぎていくキャピキャピとした女子高生らを見ながら、溜息混じりに呟く彼女。
一見ドライな印象を受ける彼女だが、しかし本心は素直ではない薄桃色の口とは、全く異なっていた。
(翔、どんなチョコが好きなんだろ……。大きめのハート型?それとも一口サイズで沢山作ってみるとか?いや、ここはガッツリとチョコレートケーキって手も?いやでもそれはそれで重たいんじゃ……)
悶々としながらも、響の足は自然と真っ直ぐに、デパートの食品売り場、バレンタインコーナーへと向かっていた。
想いを伝える聖戦へと臨む乙女の為に、此処にはあらゆるチョコが集められている。
既製品のお得用からキャラもの、期間限定フレーバーに、ちょっと高めの高級チョコレートの詰め合わせまで。大小様々なチョコが棚に並ぶ。
無論、既製品だけではない。手作り用に販売されている、大きな湯煎チョコ各種。ブラウニーミックスにガトーショコラミックスと言った、チョコレートケーキ用のパウダー類。
ホットケーキミックスに、スポンジケーキ。タルト生地等も取り揃えられている。
(どれも美味しそう……。うーん……翔がどれを喜んでくれるにせよ、まずはチョコレートを確保しない事には何とも……)
響は目の前の棚に並んでいた、湯煎用のチョコレートへと手を伸ばす。
その隣から、同じものへと手を伸ばしている少女の手に気付かずに。
「「あっ……!」」
ぶつかる手と手。驚いて互いに手を引っ込めると、隣に立つ少女へと目を向ける。
響の隣に立っていたのは背の低い、ウェーブがかかった銀髪を腰下まで伸ばした少女だった。
頭頂部にはぴょこんと曲がった房……所謂アホ毛が揺れている。
「ご、ごめん……」
「わ、わたしの方こそ、ぼーっとしてて……ごめんなさい」
綺麗な角度で頭を下げる少女からは、気の弱そうな印象と同時に、育ちの良
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