第百四十一話 セビーリャ沖の湖戦その四
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「俺は」
「果物は」
「ああ、何かあったか」
「バナナなりオレンジなりと」
「じゃあバナナにするな」
「そちらですか」
「言われてみれば栄養も考えないとな」
そちらのバランスもとだ、久志は士官に述べた。
「ちゃんと」
「棟梁はよくそう言われますね」
「食う時にな」
実際にとだ、久志も答えた。
「考えてるぜ」
「はい、それでパンやチーズだけでなく」
「果物もな」
「召し上がられますね」
「ここにオレンジとかライムとか積んでるのもな」
「それもですね」
「それを考えてだよ」
それでとだ、久志は士官に答えた。
「ちゃんとな」
「果物を多く各船に積んで」
「食ってもらってるんだよ」
「ライムにしてもですね」
「ライム搾ってな」
「ラム酒に入れて飲ませてますね」
「あとザワークラフトもな」
この食べものもというのだ。
「積んでるだろ」
「はい、そちらも」
「それもな」
「将兵の為ですね」
「半島から連合王国まで船ですぐだけれどな」
それでもとだ、久志は士官に話した。
「俺としてはな」
「そうしたものをですか」
「将兵にちゃんと食ってもらいたいんだよ」
「それが万全に戦える条件ですか」
「そうなんだよ、若しもな」
「若しもといいますと」
「果物とかザワークラフトも食わないとな」
パンやチーズだけでなく、というのだ。
「長い船旅だと壊血病になるしな」
「あの病気ですね」
「貴官も知ってるよな」
「あれは恐ろしい病です」
士官は壊血病について暗い顔で答えた。
「歯茎から血が出て歯が抜けて」
「身体に力が入らなくなってな」
「死んでしまいます」
「寒いところだと多いよな」
「何故か」
「半島じゃまずないだろうけれどな」
「恐ろしい病です」
こう久志に述べた。
「実に」
「それを防いでくれるんだよ」
「果物やザワークラフトは」
「つまり野菜だな」
久志はザワークラフトについてこう述べた。
「そういったのを食ってるとな」
「壊血病にならないですか」
「あとな」
久志はさらに言った。
「パンも食っておかないとな」
「駄目ですか」
「こっちは脚気だな」
「脚気といいますと」
士官はこちらの病気は知らず首を傾げさせた。
「一体」
「こっちは足がむくんで動けなくなってな」
「そしてですか」
「心臓も動かなくなるんだよ」
「そして死ぬ」
「そうなる病気なんだよ」
それが脚気だというのだ。
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