ターン21 歯車たちの不協和音
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握り締めて立ちすくむ。
ソーラー・ジェネクス 攻0
リンクリボー 攻0
魔妖仙獣 大刃禍是 攻0
歴戦の戦士たちの全てが、無に帰った。ソーラー・ジェネクスはもはや光を取り込むこともなく、力なく垂れた両腕からひび割れたソーラーパネルの欠片が散っていく。大刃禍是もまた妖獣の気迫を失い、そよ風程度しかない空気の流れと共に子犬のようにひれ伏して尾が地面に伸びる。そして両者を待ち受けるのは、ただ敗北の2文字のみ。
「よもや、私たちのタッグが……それにそのカード、あなたは……」
「よせ、もはや言葉は無用。来い!」
「……!」
覚悟を決めたロベルトの一喝に、人影の場のモンスターが動く。灼熱の光が急速に視界いっぱいに広がっていき、彼らの意識はそこで途絶えた。
青木 LP4000→0
ロベルト LP4000→0
「……」
全身を炎に包まれ焼かれ、悲鳴すら上げることもできずにその場に崩れ落ちる2人の敗者。一本松一段、朝顔涼彦に次ぐ同じ手口での犠牲者にはもはや一瞥も与えることなく、人影はその場を去っていった。
数時間後。犬の散歩中に偶然焼け焦げた意識不明の怪我人を発見したという通行人からの通報を受け、救急車とともに糸巻が現場に辿り着いた。虫の息で辛うじて生きているだけの元同僚の変わり果てた姿に、拳が白くなるほどに力を込めて両手を握りしめる。
2人を乗せた救急車がその場を後にするのを見送ってから、煙草を取り出して火をつける。そのまま煙を吸っては吐くも、その日の煙草からはまるで味がしなかった。勢いよく手近なコンクリートの壁を殴りつけ、そのまま前に倒れて額を冷たいコンクリートに付ける。
「クソッ、何やってんだ馬鹿野郎!朝顔だけじゃねえ、青木のおっさんにロブもだと!?アンタら全員揃いも揃って元プロデュエリストだろうが、これだけズタズタにされて何がプロだ!」
吐き出されたのはその言葉尻だけ捉えれば、横暴で乱暴なことこの上ない言葉……しかし彼女の声は虚勢こそ張っているものの普段の彼女からは想像もできないほどに震え、誰にも見せないその表情は今にも泣き出しそうに歪んでいる。
「……どいつもこいつも、アタシ1人ばっかり置いてきやがってよ……アタシはまだ、許しちゃもらえないのか……?」
ずるずると倒れ込むように漏らした言葉は、嘘偽りのない彼女の本音。普段は決して口にしない、彼女がその命尽きるまで背負い続けるしかない十字架。
しかしその弱音を聞く者は、誰一人としていなかった。
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