ターン21 歯車たちの不協和音
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う機会もあるでしょうが、それより今はこちらの件ですね。『二色のアサガオ』……あの朝顔さんを簡単に下すほどのデュエリスト、心当たりはありますか?」
そう問いかける青木に、ロベルトが無言で首を横に振って応える。にべもない返答にですよねえ、と嘆息した。近年のデュエリスト人口そのものの減少とそれに伴う質の大幅な低下は彼らもよく知るところであり、悲しみつつもどうにもできないのが現状である。そしてまた、彼らがそれに依存しているのも事実。世代交代がまともに機能していないからこそ、もう現役を10年以上続けている彼らにいまだ裏の仕事が回ってくるのだから。
「……とにかく、メールだと最低限のことしか書いてありませんでしたからね。早く巴さんと合流して、詳しい話を聞きましょうか。同じ元プロ仲間として、見過ごすわけにはいきませんからね」
「同感。だがその前に手土産、用意できそうだ」
「ちょ、ちょっと!?」
手土産。そう言うが早いが、いきなり歩くスペードを引き上げるロベルト。長い足をフルに生かしてがしがしと進む横を、小走りを通り越して半分走りながら青木がどうにかついていく。表通りから裏道に抜け、さらにいくつもの角を曲がり、次第に入り組んだ路地裏へ。彼がその足をようやく止めたのは、三方向を古いビルの壁面に囲まれた行き詰まりに飛び込んでからだった。いくら普段からダメージの実体化するデュエルで鍛えているとはいえ腹も出てきた中年男性に急な運動は厳しかったのか、息を切らしながらも青木がわずかに遅れて顔を出す。
「ま、まったく……急にどうしたん、ですか……」
そう文句を言いつつも、そこにいた連れの姿に青木は目を丸くした。普段は大柄な体に隠れて目立たないが、ロベルトが肌身離さず持ち歩いている自らのデュエルディスク。それが今は起動状態にあり、すでに装着済みでデュエルの始まりを今か今かと待ちわびている。
そしてこの状況を見てなおもなすべきことがわからない、そんなことでは裏の世界を生き抜くことなどできはしない。青木ももはや何も聞かずにスーツケースの中から同じくデュエルディスクを取り出して起動し、愛用のデッキをセットした。
そして、まるで2人の用意が終わるのを待っていたかのようなタイミングで3人目の人影が路地裏へと現れる。
「あれがあなたの言っていた、『手土産』ですか?」
「愚問だぞ。お前が朝顔を潰した、そうだな?」
それは質問というよりも、確認のための問い。人影はしかしその問いに直接は答えず、その腕に装着したデュエルディスクを起動させた。
「……青木勝。ロベルト・バックキャップ。覚悟」
「名前を知る。つまり我々の経歴も知っている、だな?にもかかわらず1人で挑むか」
「取りつく島もなし、ですね。仕方がありませんね、随分と軽く見られたも
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