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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン21 歯車たちの不協和音
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を言っても無駄だ、それどころか下手に邪魔をするとこちらまで敵認定されかねない……そう判断しての行動であり、そして実際にその見立ては正しい。
 そして清明はまた、こうも考えた。これから鳥居がこの男たちに何をして口を割らせにかかるにしても、どう婉曲に表現したところでそれはあまり愉快な光景にはならないだろう。無言で開いたままのドアを指さし、自分と八卦、そして竹丸を順に指し示す。言わんとしていることを理解した少女もややためらいがちに小さく頷き、友人と共にそろそろと教室を後にした。
 鳥居が彼らを振り返ることは、最後までなかった。





 そして、それとは同時刻。家紋町の繁華街を、2人の男が連れ立って歩いていた。かたや、くたびれたスーツ姿でスーツケースを手にした、髪がやや薄くなりかけている冴えない日本人の中年。かたや身の丈2メートルはある、がっしりとした体形の外人。どこからどう見てもアンバランスな組み合わせの2人だが、彼らはれっきとした連れである。それも、一部の世界ではそれなりに名の知れた。
 日本人の名は、青木(まさる)。外人の名は、人呼んでロベルト・バックキャップ。かつてはそれぞれが『太陽光発電』、『後ろ帽子の(バックキャップ)ロブ』の二つ名と共に表舞台で一世を風靡した元プロデュエリストであり、現在でも様々な事情からデュエルポリス入りを良しとせず、かといってテロリストに直接加担するでもなくフリーランスで裏のデュエル世界をプロとしての実力ひとつで渡り歩いてきた、歴戦の戦士たちである。

「それにしても、家紋町とは。まさかこんなに早く、この町に戻ることになるとは思いませんでしたよ」
「全くだ。俺もお前もこの場所、苦い記憶ある」
「悪い思い出じゃありませんけどね、でしょう?」
「……ああ。そうだな」

 彼らの言う苦い記憶とは他でもない、つい先日この町で開かれた裏デュエルコロシアムのことだ。開催当初は全くのノーマークだった無名の新人、鳥居浄瑠にその人生経験で遥かに上回る青木ばかりか、裏デュエル界でもかなり上位に位置する猛者としてその名を轟かせてきたロベルトまでもが敗北。あれからしばらくは両者とも一気に落ちこんだ自らの評判を取り戻すため、かなりの苦労を強いられたものだ。

「それでもあれは随分と、楽しいデュエルでしたよ。いつ以来でしたかね、あんな気分で負けを認められたのは」
「ああ」

 そう目を細める青木に、ロベルトも先日の戦いを思い出すように小さく頷いた。しかし、いつまでも過去の記憶ばかりに浸ることはできない。彼らはこの地に遊びにではなく、仕事のため訪れたのだから。雇い主は裏デュエルコロシアムの開催者でもあった巴光太郎……しかしその依頼の内容は、あの時とはまるで異なる。

「まあ彼にはこの町にいる限りいずれまた会
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