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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン21 歯車たちの不協和音
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起きていることだけは察し、しかし何が起きているのか、自分はどうしていいのかわからない。

「ほら、ちょっとごめんね」

 おろおろする小さな肩を、さりげない動きで清明が手をかけて後ろに下がらせた。思いのほかしっかりとしたその感触を妙に意識して、頬がかあっと赤くなる。当の本人が前方に神経を集中させていたためその変化に気づくことがなかったのは、彼女にとっては幸いだった。
 そんな甘酸っぱい思春期少女の機敏などお構いなしに、ゆっくりと扉がスライドする。

「よう」
「……あれ?」
「鳥居、さん……ですよね?」

 顔を出したその人影に、警戒していた2人が同時に首を傾げる。現れたその顔は見間違えようもなく鳥居浄瑠そのものであり、先ほどの鬼気迫る気配から彼らが想像していた敵の増援とは真逆の存在だった。包帯を巻き松葉杖に体重を預ける痛々しい姿ではあるものの、本人はさほど気にしている様子もない。

「なんだ、俺の顔を忘れたのか?まあいいさ、入るぞ」

 その口調は明らかに、いつもの彼と違う。しかし同時に、その違和感を口に出せないような雰囲気を鳥居は漂わせていた。その怪我はどうしたのか、などという当然の疑問すらも口にするのがはばかられるような無言の拒絶。
 結局誰も口を開かない沈黙の数秒が続いたのち肩をすくめ、松葉杖を巧みに動かして片足をやや引きずるように教室に入る鳥居。その前に立ち塞がる格好になっていた清明たちが慌てて脇にどいたことで、いまだ縛られて意識のない2人組へとその視線がまっすぐに届く。冷たい視線がその姿を射抜き、ややあって短い呟きがその唇から漏れた。

「そうか、こいつらか」
「「……!」」

 その言葉を発した、その瞬間。首を傾げながらも警戒を解きつつあった少女の背に冷たいものが走り、同じものを感じ取った清明もその横で反射的に腕輪型に戻したデュエルディスクに手をかける。
 2人の戦士をそこまで反応させたなんてことのないその言葉からにじみ出ていたのは、まぎれもない敵意と殺意だった。エンタメデュエルを謳いあくまでも自分で定めたショーマンとしての役に徹していた鳥居浄瑠とは似ても似つかない、抜き身の刃のように研ぎ澄まされた負の感情。

「やっと見つけた、この時期にデュエリストの狩りだと?タイミング的に考えても、お前たちが手がかりなんだろう?管理人も監視カメラも期待外ればっかりだったんだ、今度こそまともな情報吐いてもらうぞ……!」
「あの、鳥居さん……?」

 狂気的なものさえ見え隠れする目で、カツカツと松葉杖の音を響かせながら気を失った侵入者たちの元へと近寄っていく鳥居。恐る恐るその背中に声を掛けようとした少女を、清明がその途中で無言で首を横に振り止めた。何が起きてこうなったのかはさっぱりわからないがこの調子だと何
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