第十話〜代償〜
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撃の出所は何処だ?
何故今自分は攻撃を受けたのだ?
江の脳裏にそんな疑問がよぎる。
「ごふっ…」
口から血があふれ出る。
そしてその偃月刀を辿っていくと、そこにはいつか見た男の姿があった。
狂喜に支配された声が聞こえる。
「油断したな、朱才」
膝をつく江を見下すのは黄祖。
そう、黄祖は騎兵の上げる土煙りに隠れ、江を串刺しにしたのだ。その表情は下卑た笑みに歪む。
「ようやく、ようやく果たせた!俺をここまで追い詰めた男への復讐を!!!」
そう言って、跪く江の顔を蹴り上げ、そして頭を踏みにじる。
「っ!」
「ハハハハハハ!!!ほら、どうした。いつもの余裕は何処へいった?無敵の朱才様よぉ!」
ひたすら江をいたぶる黄祖。
しかし江は何の反応も示さない。
「…最後まで気に入らない奴だ。……………死ね」
黄祖の得物が振り下ろされる
ガキッ
ことはなかった。
突如前方から飛んできた矢を、黄祖は偃月刀で防ぐ。その隙に、何者かが江を抱えて走り去った。
偃月刀の向こう側には見知った顔があった。
「なっ、朱治!何故貴様がここに!」
「あら、酷いわね。焔だけじゃないのよ?」
「!?」
とっさに飛びのいた黄祖。
そして少し前までいたあたりには得物が振りおろされていた。
「さっきぶりね、黄祖」
「孫策…だと…安昌の港はもう制圧されたのか」
「ええ、あっという間よ」
安昌の戦況など彼女は知る由もない。だが彼女は自信を持って是と言い切る。
雪蓮の背後には孫呉の兵士が並ぶ。予想外の事態に混乱する黄祖。
しかし数瞬のうちに結論を出した。
「者共、撤退だ!」
言うや否や、馬にまたがり、駆けだした。
「…逃がさないわよ」
身から溢れる憤怒を隠そうとしない雪蓮は追撃を開始しようとする。が、それを焔が制する。
「雪蓮ちゃんっ!!!」
「っ!そうだったわね!」
血濡れの江を抱えあげると、雪蓮と焔は馬にまたがり、兵を従えて南方へと駆けていった。
両軍が撤退し、誰もいなくなった、名すらない河沿いには両軍の兵の屍が無数に横たわっていた。
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