第93話 甘さの代償
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
揚羽は私を真剣な表情で見つめると言いました。
「そんなことは百も承知だ。自分で蒔いた種を自分で刈り取りに行く。烏桓討伐までに戻るので、揚羽は準備を頼む」
「分かりました。後事のことは、この私にお任せください」
揚羽は優しい微笑みを浮かべ言いました。
真悠の報告は最もらしいですが、違和感があります。
逃亡兵が抵抗するのは当たり前ですが、彼ら全てが抵抗するとはとても思えません。
私のことを恐れたとも言えなくもないですが、私が黄巾の乱後の投降した賊への施策を鑑みれば、主防犯である北郷は別として、他の者達は死罪になる可能性が低いと思うのが自然です。
それでも、彼らが敢えて抵抗したというなら、それなりの理由があるはずです。
彼らは世を善くしようと、桃香の元に集った兵達です。
だからこそ、納得いかないのです。
私の考え過ぎなのかもしれませんが……。
「義兄上、この私を同行させていただけないでしょうか? 北郷を逃亡させた責任は私にございます。私に是非、汚名返上の機会をお与えください」
真悠は拱手をして、真剣な表情を私に言いました。
彼女は北郷が并州逃亡しきった経緯を知っているはずです。
その当人が北郷討伐に加わりたいとは……。
良いでしょう。
どのような了見かは知りませんが、この私があぶり出してやります。
真悠と一定の距離があり、知恵が回り、尚かつ現在動ける者も連れて行きましょう。
風と稟のいずれかでしょうが、稟には幽州の諜報活動を任せたいと思っているので、ここは風にします。
「真悠、あなたは北郷討伐の責任者でありながら、失敗したのですから自重しなさい。あなたが同行しては、正宗様が親族に甘いという風聞が立ってしまいます」
揚羽は真悠を厳しく睨んで言いました。
「姉上、私は兵卒で構いませぬ。だから、問題ございませんでしょう。義兄上も私のことは兵卒としてお扱いください。義兄上のことも、正宗様と呼ばせていただきます。これならば、周囲の者に示しがつくのではないでしょうか」
真悠は厳しい表情を浮かべる揚羽に微笑を浮かべました。
「分かった……。真悠、お前を兵卒として、連れて行く」
揚羽は私の決定に黙っていましたが、真悠のことを終止、厳しい表情で見ていました。
真悠は彼女に軽く微笑み返していました。
「揚羽、3ヶ月以内に帰還する。冥琳も頼んだぞ。それと……、風を参謀として連れて行く」
「は!」
「は!」
揚羽と冥琳は拱手をして応えました。
私は数日後、真悠、風と騎兵100騎を連れ、并州へ旅立ちました。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ