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戦国異伝供書
第七十四話 元服しその九

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「そもそも何時までも続く戦はなかろう」
「ですな、確かに」
「そうした戦はありませぬ」
「そうしたものはありませぬ」
「そして大乱も」
 今の戦国の世もというのだ。
「やがては終わりますか」
「それもまた」
「何時までも続くものでなく」
「終わる時が来ますか」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「その戦乱が終わる時が近付いているやもな」
「では」
「その時は、ですか」
「織田殿がそうする」
「戦国の世を終わらせますか」
「わしはそう思う」
 信長、彼がそうさせるというのだ。
「必ずな、わしがそれを見届けられるかはわからぬが」
「そのことは、ですか」
「わかりませぬか」
「どうしても」
「うむ、わしも歳じゃ」
 宗滴は自分の高齢のことも話した、還暦も超えてまだ矍鑠たるものだがそれでも限度があるというのだ。
「何時この世を去ってもおかしくない」
「そのことは」
「言われますと」
「それは」
「あえて言う、わし自身のことであるからな」 
 それでというのだ。
「わしはまことにな」
「何時この世を去られるかわからぬ」
「だからですか」
「今言われますか」
「朝倉家のことも気がかりで織田殿についても」
 信長のこともというのだ。
「見届けられるか」
「そのことがですか」
「わかりませぬか」
「どうにも」
「見たいがな、朝倉家を守ったうえで」
 そのうえでというのだ。
「出来る限り生きたいが」
「それでもですか」
「やがては」
「そう言われますか」
「人は今日元気でも明日死ぬものよ」
 宗滴がこれまで散々見てきたことだ、戦の場は特にそうであるが普通に生きていても人はそうしたものだ。
「何かしらでな」
「急な病なり災厄なりで」
「そうなりますな、確かに」
「そのことは」
「地鳴りや雷や火事や野分で死ぬ」
 自身、落雷、そして火事に台風でというのだ。
「馬に蹴られたり山で獣に襲われたり谷に落ちたり溺れたりとな」
「色々ですな」
「人は急に死にますな」
「確かに」
「そうしたものであるからな」
 だからだというのだ。
「わしも何時じゃ」
「この世を去られるかわからぬので」
「朝倉家のことも気掛かりで」
「織田家のことも」
「そして浅井家のことも」
「わしは早く生まれ過ぎたか」
 こうもだ、彼は話した。
「どうも」
「早く生まれられ」
「寿命が近付いている」
「そうだというのですか」
「そうじゃ」
 そういうことだというのだ。
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