帰還(2)
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同時にアスナと過ごした二週間あまりの生活が、頭の中に再生されていく。
甘い彼女の髪のかおりや湖を波立たせる風の冷たさが五感によみがえる。
そしてこの「ホーム」がここにこうして、存在している奇跡にうちのめされる。
俺が経験したいくつかの出来事の、ただ一つでも欠ければここに「ホーム」は存在していない。
|《ソードアート・オンライン》最後の時、水晶の浮島でアスナとともに崩壊を目の当たりにしたアインクラッド。|《アルヴヘイム・オンライン》に再び存在することとなったアインクラッド。
二つの世界をつなぐ要素が一つでも掛けていたら、目の前の「ホーム」は存在しない。綱渡り――なんて言葉が陳腐になってしまうくらいの確率で、俺たちはここに戻ってくることができたのだ。
崩壊と再生を繰り返したアインクラッドにあって、俺とアスナがとうとう見ることができなかった雪化粧をしながら、「ホーム」は確かに存在していた。存在してくれていた。
踏みしめているはずの地面がゆがむのを感じた。
薄くて細くて頼りない糸の上の奇跡を、頭のどこかが感じ取った。
ここに立つまでに経験した日々は、思い出すだけでも心臓を直接刃で切り裂かれるような辛い出来事と、魂そのものが安らぐような幸せな出来事でない交ぜになっている。
でも、それらがここにたどり着くために必要な要素だったなら。アスナと二人でここに至るためにあった出来事だったなら。
俺はいま十分すぎるほどの幸せを得ているのではないか。
はっとして、いままで追いかけてきた背中を見る。
アスナは雪の上にうずくまっていた。あれだけの振り乱された長い水色の髪は、雪の上に落ちてたゆたっていて、むき出しの白い肩はいつもより華奢に思えた。
その細くて、吹けば飛んでしまいそうな小さな肩を抱きしめたい。
でも、情けないことに俺は足を震えていた。押し寄せる感情の波が制御できない。
――アスナ
歩け。歩いてアスナの肩を抱きしめよう。と心は叫んでいるが、足は一歩も動いてくれない。
さっきユイに格好つけたばかりなのに、現実はこれだ。
俺は無意識に自分のコートを脱いで、となりで目頭を押さえているリズに差し出した。
「ごめん、リズ……頼む。リズにしか頼めない。俺――」
いま足が、と続けようとしたのと同時にリズと目があった。
その瞬間、リズはなにかに驚いて目を見開いた。
「キリト、あんた」
そしてほんの一瞬だけ、顔をくしゃくしゃにしたリズは俺のコートを抱きしめて頷いてくれた。
「……了解。貸しだからね。役得っていうにはちょっと切ないけどさ」
リズは万事心得たとばかりに頷いて、アスナに向かって歩きだす。最初はおずおずと、途中からはじかれたように駆けだし
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