帰還(2)
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た。
リズはそのまま、しゃがみこんで嗚咽を漏らすアスナの肩にコートをかけ、コートごとアスナを抱きしめた。
本格的な耐寒性能はないものの、少しは寒さ防げるはずだ。
雪が落ちる音にまじって、アスナの嗚咽が流れていた。
うしろから澄んだ翅音が響いた。
「ママ? ママ――!」
俺のすぐ脇を、澄んだ翅音をユイがアスナに向けて飛んでいった。俺が進めなかった距離を一直線に。
彼女の前にまわりこみ、アスナの胸に飛び込むユイの姿にすこし胸がさざめいた。
「おいおい。いきなり走り出すから、連中驚いてたぞ」
俺は肩をすくめた。おそらくユイに案内されてきたのだろう。
ざくざくと雪を蹴り、俺のとなりに誰かが立った。俺はなんとか、首をとなりにむけた。
ボス戦で少々装備がくたびれた印象のクラインがそこにいた。
「すぐに追いかけてきたんだどな。まったくラストアタックの栄誉なんて、そうそ――」
クラインが凍りついた。失礼なことに俺を見て。口をぽかんと半開きにしながら、まぶたを二、三度閉じては開ける。
「キリト、おまえ、それ」
「な、なんだよ……」
「そうだよな……! そうだよ……! だってクリスマスなんだぜ……? お前だって……」
最初はからかわれているのかと思ったが、それにしてはクラインの様子がおかしい。
まるで未知のモンスターでも発見したかのような驚愕を露わにするクラインに、俺は困惑した。
クラインの震える指先が俺の顔を指さす。
――顔?
クラインだけならばともかく、後ろにひっついてきたシリカとリーファの顔も表情を凍てつかせる。視線の先はやっぱり俺の顔だ。
混乱する俺の前で、ピナを肩に乗せたシリカがケットシーの猫耳と声をふるわせながら言った。
「……この世界の感情表現って、とても不便だと思ってました」
シリカが泣き出した。透明な雫が頬を流れ落ちる。肩に乗ったピナがいつもより高く鳴いた。
「誰にでも隠したい感情って、あります。泣きたくないのに、涙を見せたくない人の前で、勝手に涙が落ちるなんて、不便で、不便で仕方がないって思ってました。笑って、さようならを言いたいのに、それもできないなんて、残酷で――」
「うん……すごい不便……だよね」
シリカの言葉を引き取るようにリーファが言う。青白い月光を吸った涙を目の端にたたえている。
「だって感情をぶつけあうだけじゃ、いろいろ壊れちゃうもん。どんなに親しい人にも、隠したい感情ってあるから……それが直接伝わっちゃうって、すごい……残酷で……」
リーファが言うと、シリカが再びしゃくりあげた。リーファはシリカの、ピナの乗っていないほうの肩にそっと指を置く。
俺はまだ分からない。
シリカとリ
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