第七十四話 元服しその一
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第七十四話 元服し
猿夜叉が元服する時になった、それでだった。
彼は秘かに家臣達を集めて話した。
「よいか」
「はい、それでは」
「元服された時にですな」
「動かれますな」
「では我等も」
「その時は」
「宜しく頼む」
是非にとだ、彼は言うのだった。
「若し父上がわしの言葉に首を縦に振られなければ」
「その時は、ですな」
「かねてよりお話された通りに」
「その通りに動かれますな」
「そうする、そしてじゃ」
猿夜叉はさらに話した。
「立ち上がるぞ」
「わかりました」
「その時はお任せ下さい」
「そうさせて頂きます」
「我等も」
「宜しくな、もう島は決めてる」
ここで猿夜叉はこうも言った。
「既にな」
「それはどの島でしょうか」
「琵琶湖の島ですな」
「そこにですな」
「殿を送られますか」
「そうするが」
それでもと言うのだった。
「しかしこれはあくまでな」
「最後の最後ですな」
「出来るだけ殿とお話し」
「首を縦に振って頂きますな」
「そうするしじゃ」
それにというのだ。
「わしとしてはな」
「そしてですな」
「決して血を流させない」
「何があろうとも」
「それはですな」
「そうじゃ、何があろうともじゃ」
荒いことになろうともというのだ。
「それは避ける」
「こうしたことで家を分けてはなりませぬな」
「例え何があろうとも」
「若しそうなれば」
「我等にしても」
「そうじゃ、後に深い傷を残す」
家中にとだ、猿夜叉は家臣達にこのことも話した。
「だからな」
「決して、ですな」
「それはなりませぬな」
「血を流しては」
「それも一滴も」
「家中を割ることはせぬ」
猿夜叉は絶対にと話した。
「そこは守ってもらう」
「既に家中の殆どは若殿についております」
「若殿のお心に感じ入り」
「そうして」
「そうであるな、ではな」
まさにと言うのだった。
「宜しく頼む」
「殿と周りの方々にはですな」
「一時大人しくなってもらい」
「そしてですな」
「暫くの間は」
「静かにしてもらう、それでな」
そのうえでというのだ。
「六角家との戦をすぐに終わらせ」
「そのうえで殿に戻って頂く」
「大殿として」
「そうして頂きますな」
「これでも不孝じゃ」
猿夜叉はこうも言った。
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