第六章 六番目の魔法使い
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踏み入れていく。
「なんかどろんどろんしてて、やだなあ。せめて移動してから異空に入るのはダメなの?」
瘴気まみれの空気に嫌悪して、誰にともなくアサキがぼやき尋ねる。
「時間が掛かるけえね。それに、先に変身しとった方が安全じゃろ。異空なら、移動時に人に見付からないし、早い」
治奈が説明する。
「いわれれば、そうだなあ」
さて、既存メンバー全員が異空へと入り込んで、残るは一人、新戦力の慶賀応芽だけである。
異空の側から見ると、彼女の方こそが、どんより薄暗い空間にいるように見える。
透明フィルムを何枚も重ねたような、濁った向こう側にいるような。
最後の一人、慶賀応芽も、
「ほな、あたしもいくでえ」
すっ、と手を横に動かして、空間をかき分けて開こうとするのであるが、
しかし……
なんだか難しい顔になっている彼女。
立て付けの悪い家の戸を開こうとするかのように、ガタガタガタガタ。
しかし、開こうとすれどもすれども空間が開かない。
それもそのはず。
カズミが両手でがっしり、空間の裂け目を押さえ付けているのだから。
慶賀応芽も、両腕に渾身の力を込めて、異空への空間をこじ開けようとするが、カズミの怪力の前にびくとも閉じた裂け目は開かない。
「幼稚なイタズラやめろや! クソボケが! ハゲえ!」
激怒絶叫、ガッと一気に力を込めた瞬間、待ってましたとばかりにカズミが押さえ付ける手を離したものだから、突然扉が開いた感じに慶賀応芽はがくり前のめり、バランスを崩して転びそうになった。
いや、転んだ。
無様に、ばたんごろんと。
スカートまくれて可愛らしい柄のパンツが丸見えになってしまった彼女、物凄い勢いで起き上がって、恥ずかしげに顔を赤らめながら裾を直すと、怒りの形相、大股で異空側へと入り込んだ。
「覚えとれや、このカスが!」
沸騰しそうな凄まじい顔で、カズミを睨み付けた。
「な、なんのことでしょう応芽先輩っ。それより、派手に転んでいたようですがお怪我はなかったですかあ?」
「やかましいわ」
「それとも、実は味方をも騙すエリート様の崇高な作戦なのでありますか? わたしのような下層の者の目には、単なるバカのズッコケにしか見えなかったのですが」
「黙れ! やかましゆうとんのが聞こえへんのか!」
「うん、聞こえない。あ、間違った、聞こえへん」
「よお聞こえるよう耳の穴ァほじくり回してでっかくしたろか!」
「いてててて、なにすんだあ!」
耳を掴まれ引っ張られたカズミは、痛みに悲鳴を上げつつ慶賀応芽の耳を掴んで引っ張り返した。
と、そんなバカなことしている横で、アサキが真顔で、
「ヴァイスタが現れたんだよ!
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