第六章 六番目の魔法使い
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。
そんな、しーんと静まり返った中、
「ちょ、慶賀さんっ! なにしてんのっ!」
大慌てでクラス担任の須黒美里先生が入ってきた。
「冗談、冗談やて」
慶賀と呼ばれた女子生徒は、笑いながら手首ぱたぱた上下に振った。
なんだかよく分からないながらも、それぞれ自席へと着く男女生徒たち。
「なんだあいつは」
カズミも、訝しげな顔をしつつも大人しく自席に座った。
「転校生? まさかなあ」
アサキが自席で、胸の前で手を組みながら小さな声を出した。
まさかと思うのは当然だろう。
自分がこのクラスに転入してからまだ二ヶ月しか経っておらず、他のクラスでも転校生の話は聞かない。
それなのに、このクラスだけさらに一人増えるなど、理屈で考えておかしいからだ。
慶賀と呼ばれた、フロックコートっぽい制服を着た女子生徒は、先生にいわれるよりも早く、白墨を左手に取ると黒板に名前を書き始めた。
端から端まで大きく四文字、いや丁寧にルビまで振っている。
慶 賀 応 芽。
「今日からここで世話んなる慶賀応芽や! 使うとる言葉ん通り大阪の中学からきた。どうか仲良うしたってな!」
よく通る大きな声でいうと、にんまりとした邪気のない笑みを満面に浮かべた。
その言葉に、一瞬にして教室がざわついていた。
「なんでこのクラスだけ?」
「転校生が二人なんて」
「ねーーっ」
みな、アサキと同じようなことを考えていたのである。
治奈と正香も、これはなんなのだろうか、といいたげに顔を見合わせている。
彼ら彼女らのぼそぼそ声に、片方の眉をぴくんと上げた慶賀応芽は、
「その、一人めの転校生ってのは誰や?」
と、尋ねた。
まったく邪気はないのかも知れないが、なんだか偉そうに。
「わ、わたし……です」
アサキが、前の席である治奈の背中に隠れるように、そおーっと右手を上げた。
さっきの、うへへへ一泊ゲーとは、打って変わって急降下というか墜落したようなテンションである。
つかつか近寄って来る慶賀応芽に、ひいっと悲鳴を上げると余計に小さくなってしまった。
治奈たちのおかげもあって、今回の学校では、もうすっかりクラスメイトと馴染んでいるアサキであるが、性格の根本が変わったわけではないので、初対面の相手は苦手なのである。
「なにびくついとんねん。……転校の先輩、よろしゅうな。慶賀応芽や」
慶賀応芽は、すっと右手を差し出した。
アサキも、おどおどしながらも立ち上がると、
「令|堂《ど
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