折れた心と盗まれた心
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
スズに諭されて、仕方なくルビアの旅館を出る。護神の女の子は、困った顔をしていたけど逃げずについてきた。
……正直、ひどい気分。アローラで盗むのに失敗したときよりももっと。
まだわたしは失敗したわけじゃない。負けたって捕まったって、怪盗としての自分で少しずつ進んできた。
でも、そう思っていたのはわたしだけで。キュービはわたしに宝を盗んで欲しいから護神をわたしにつけていたとルビアは言う。
わたしはキュービと約束した。本気で宝を盗む。八百長はしないと。でもそれは嘘だったとしたら。わたしは何のために頑張ったんだろう。何のために痛い思いも悔しい思いをしたんだろう。
上手くやっても、上手くやらなくても護神が助けてくれて宝を盗めるなら……わたしが頑張る意味なんて、全くない。
サフィールもそう。護神がわたしについてるんじゃ、いくらカードを熟知してても、わたしに勝ったとしても、捕まえて交渉なんてできっこない。ルビアがやる気をなくしたのは、それを理解したからだ。
全てはキュービの手のひらで、あの人の都合良く宝が盗まれて、みんなは何も知らずただ護神に助けてもらった怪盗を見て喜んで終わり。
ぐるぐるぐるぐる、もやもやした感情が渦巻く。
遊花区からは随分距離があったはずなのに、いつの間にかわたしと護神の子はホテルの自室に戻ってきていた。
【どうです、少しは落ち着いてくれましたか?】
「全然。どうして、ルビアもチュニンもキュービも。優しい顔で、人を騙すの。わたしやサフィールの気持ちを。蔑ろにするの」
【さあ。人間の心情についてスズは疎いですから】
「とぼけないで!スズだって、知ってたんでしょ。わたしが最初に護神とあったとき、スズはなぜか一切反応をしなかった。さっき護神が現れたとき、スズは明らかにわたしを早くルビアから遠ざけようとしてた。スズとキュービは管理者同士、元々私の知らないところでも会話ができる。……わたしに怪盗をやる気にさせるために、わざと護神について知らないふりをしてたとしか思えない!」
【……おやおや。クルルクに似てきましたね。ご名答です】
「クルルクの名前で、わたしの機嫌が、直るとでも思ってるの……?」
声がひきつる。このリゾートに来てから何回涙がこぼれたかわからない。そんな慰めみたいな返事なんてして欲しくなかった。
自分の予想が間違ってるとは思わない。……だけど、否定して欲しかった。騙して連れてこられたけど、八百長ではなく本気で盗みたいというわたしの気持ちをスズはわかってくれたと思ってたのに。
ルビアはサフィールを助けようとしていたのは自分の独り相撲だと言ってたけど、本当に一人で空回ってたのはわたしだった。スズに乗せられて、キュービにおだてられて、チュニンやルビアが怪盗を遊びみたいに言うのも当然だ。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ