折れた心と盗まれた心
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スズが黙る。どうすればわたしをその気にさせられるかとか考えてるんだろう。だけどもう嫌だ。
「もういい。帰る。こんなところで怪盗なんかやらない。リゾートで遊びたくもない。アローラに帰る」
何もしたくない。何をしたってスズやキュービの手のひらの上で踊るだけ。サフィールとの約束も果たせない。リゾートからアローラに帰る日までここから動きたくない。
わたしが動かなかったら、スズやキュービは困るはず。わたしがリゾートに着いた時にはもう怪盗がやってくるという話が広がっていて、予告の日まで後四日。今更来ないなんてことになったら、それを楽しみにここに来た人達はがっかりする。わざわざ騙して連れてくる必要がある計画がご破算になるのは二人とも嫌なはずだ。……わたしだって嫌だけど。散々人を騙したあっちが悪い。
【わかりました。こんな結果になってしまうのは残念ですが……ルビアの行動も護神が直接ラディを助けたのも予想外ですし、ラディの怒りは尤もです。仕方ないでしょう】
「…………止めないの?」
【スズの経験上、あなたが本気で口に出したことは変えられませんから。男の子のようなヒーローを演じるのをやめ、さりとて憧れたクルルクの隣を怪盗もしくは人間のパートナーとして歩くのでもなく、彼に向き合えるような怪盗になりたいと言い出した時からね】
「嘘。だって、わたしがそもそも怪盗として動かなかったら」
【今回の計画を立案したスズとキュービの面子は丸つぶれですね。下手をすると管理者としての責任を取らされるかもしれません】
「ねえ、わたしは冗談で言ってるんじゃない。本当に……本当に本当に怒って、もう何もしないって言ってるのよ!!」
叫び声が部屋に響く。驚いたのか護神の女の子の姿にノイズが走った。ちらりと見えた表情は、今にも泣きそうに見える。
【ええ。本当に、ラディは優しいですね。怒っていて、許せなくて、それでも自分が動かなかったときのスズやキュービの立場を案じている。昔義姉達に虐められて、それでも彼女達の危険を見過ごせなかった時から変わっていない。そういう人間だから、スズはあなたに目をつけた。今の世界ではほとんど失われ、限られた人や場所でしか許されないポケモンバトルをする力を与えたんです。だから、貴女の決断の責任を取るのは管理者として当然のことです。ラディが気に病むことではないんですよ】
「……おだてたって、やる気になったりしないから」
【構いません。キュービへの連絡もスズからしておきましょう。ただ、一つだけ。ラディにはやらないといけないことがあります】
意味がわからない。怪盗として動かなくてもいい。なのに今更、何をしろをというんだろう。
【スズやキュービが貴女を騙していたとしても、あなたは今まで真剣に怪盗としてポケモン達に指示し
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