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靴墨
第六章
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慢して、その碎けた探照燈の光りの中でまもなく融解するらしい。
夜の靴墨をかぶつた我、貴女の家の鄰りに通つてゐたときに、その父親は窗から我を見てゐたことあるらしい。怖くなつて、我は早くあの所からなにかの遠い塲所に行かうとした。本當に彼だつたと怖がつてゐた。唯の氣の所爲だと今まで祈つてゐる。
あゝ、あんな汚らはしいものに與へられた面影よ!天よ、なんじに呼び掛ける!~樣よ、なんじに呼び掛ける!我をこの井?に引きずり込んだ畜生に、その面影は一體だうやつて與へられたのか?感心してゐる、實は。だう、貴女はその面影を、そんな上手に操るのか!
だう、そんなことをしてゐるのか?分からぬ。だう、愛欲は、先づは冷淡になつて、その後は不思議なる憎しみになつたのかも分からぬ。貴女の魂も全く分からぬと同じ。この世の萬物も分からぬ。なぜならば、先の我が世は嘘だつたと悟つたから。もう、その世の圈外にあるものだけを見ることが出来る。
お辭儀と觀賞に値する微笑みも、ハトホルのやうな目付きも、貴女の爲に、貴女と一獅ノ死んで、我が記憶の中と我が筆が接した紙の中で永遠に生きるやう。
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