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靴墨
第五章
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ありさうに見える。そして今は、いつか我が初めの儀式中で自分の手を切つた刄で貴女のアサグロイ皮膚の分子の聖なる?を崩す勇氣が無いかもしれぬとの考へが浮かぶと、自分は弱蟲だと思ふ。なぜなら我が思想は全く正義さうだから。自分の欲念をせめず、その事實の前の臆病をせめる。
さて知つて欲しい。貴女を愛してゐるつて。一生でいつよりもだれよりも愛してゐる。ヒョツトしたらそれこそは、我が現在?態の原因かもしれぬ。
あの瞬閧謔閨A我が古いポケツトナイフを持たず外に出られなくなつた。其れはいつも我と一獅ノあると約束して常に右ポケツトの中で持つてゐた。其の鋼の重さに懷いた。一度、其れを家に殘した時に、パニツクになつたほど。飛行塲に到着して飛行機の切符を家に忘れたと意識した者のやうに。今までナイフが無く、我は一體だう存在してゐたのか分かることが出來無かつた。そして冬の寒さでは、其の柄だけが我を暖かめてゐた。
或ること、知つてる?憎みに取り付かれてゐなかつた。また、戀にも取り付かれたことがない。貴女だけに取り付かれてゐたの。我が志はいかに汚らはしさうか恐ろしさうかに見えても、その志は貴女に導かれてゐると知つてゐたならば喜んで安心して其れを認めた。自分でそれを氣付かなかつたかも知れぬとしても、貴女はたゞ一見だけで我が?行爲を祝bオてゐた。我が今や歸られなくて急いで沈んでいく命そのものを祝bオてゐたのだ。
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