暁 〜小説投稿サイト〜
靴墨
第三章
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
り進物にする前の夜に殆んど寢なかつたりしてゐた頃の幸せな鬱氣から我を遠ざけると分かりながら全心を其れに傾倒した。
彼女の躰の?部分は偉大なる女~樣の聖なる體現だと唱道したあの頃を、たゞ彼女の手を觸ることはそれまで我が無色の世界で起こつてゐた過程の限りを超える過程を動かせたりしてゐた懷かしい頃を、口に出して言へぬほど戀しがりになつた。泣きたいほど慕つてゐた。憂鬱に含ませられた大學の壁は元通り囁き續けてゐた。その壁は全てを愛藏し、全ての事について知つてゐる。蟲と女~についても、分裂(スキジス)とニヤニヤについても、腕輪と葉書についても知つてをり知り續けたり囁き續けたりする。でも愛藏することは樣々だけど、囁くことは一樣である。そんなに暗くて快い。しかし注意せねば自失する。我はもう自失した。蟲のふりをする~か~に成りたい蟲か、物を~聖視し女~を物にしたり、自罵詈の面をかぶつた我自分自身への~殿、呪はれてるモノの足を喜んで接吻したり敬慕するものを呪つたりして恥を以て昇天を探したりこと…。その囁きは遠くて遠いほど高い。しばらくすればだけ聞こえるし、近付くと非常に靜かになる。
「ケラケラケラ」
存在しない部屋のなかでの鴉片。月樣は自らの暗闇を以て廣がる。どこでも暗闇だけ。上でも下でも。いつかあちらにあつたが最早頭の中だけにある塲所の思ひ出。あのころでは塲所も、時閧焉A環境も聖なるものだつた。月は悲しんで見てゐて、我はその悲しみを謝しつゝ、する可き事をしてゐた。彼女は闍゚にになつて居た。我は彼女が寢てゐた閧ノ眠るのが怖かつた。あの夜、我以外の皆は寢た。彼女はエレシュキガルだと、彼女の友はイシュタルだと提唱し月に祈つてゐた。一瞬でも彼女の夢の中に入りたかつた。手婬の一?手前の座禪。
何を祈つたらいゝのか??したい。彼女の死を祈る可きか?彼女を有することを祈る可きか?
かう、嫌ひ。貴女も自分自身も。何故貴女は?さなかつたの?我等の中から壹人が死なねばならぬ。その事實をなにものよりハツキリ知つてる。刄で傷をほじくつて~經をあいついで其れを拔いてゐる貴女。其後は傷を治すが、すぐお腹を切りさつて我が腸を喰ふ。たよりないシヴァの上で踴るカーリー。
「ケラケラケラ」
存在しない世界の中での鴉片。全ての空閧ヘ、あの?に自分だけの意志を行つてゐた我の出ることができぬ部屋の大きさ程にくびれてある。猫は我が膝にになつてゐる。目の無い眼窩(がんか)はまわりに居る皆を覗く。足の下には血、頭の上には血。その寢臺はステュクスの水上を行く舩であり、右に居る女性を我が影はハーデースにも從ふ。皆は死んでゐたらあんたも死んだふりをしなさい。難しくても。下手であつてもだうせふりをしなさい。皆は生きてゐたらあんたも生きるふりをしなさい。不可能らしくても。誰も信じないが、一番大切なのは、ふる事だらう
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ