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靴墨
第二章
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るのも、汚い服に手婬するのも良い!死後でも殘れるその生活表現を意識した後、唯壹つの事に付いて考へられるやうになつた。彼女の服だ。
こんなふうに、過ぎる人逹から目をそむけてゐて女性更衣室の鄰りに立つ者に成つた。突然、一瞬に何かのおかしい目眩がした。あの時、自分の存在の次の一段に移つたやうな感覺があつた。生まれ變はつてゐたや、進化の新たなる段階に移つたやう。もう歸れぬ存在の樣態を入ると分かつたやうだ。

(日記カラノ記録、X X年十二月廿陸日附)
“アア、我ガ慕ハシイ畜生ヨ!知ツテマスヨ。貴女ハ衣類一点ヲ探シダセマセンデシタ事ヲ。貴女ノ反動ヲ見ルタメニ今日我ハ態ト朝早ク學校ニ來マシタ。イツカ貴女ノ着タ物ガ今ハ我ガ物デアリマス。誠ニ、貴女ノオカゲデ我ハ拝物教ノ麗質ヲ意識シテキマシタ。貴女ハイツマデモ自分ノ半ズボンヲ探シテモイヽデス。我レガナニデモ其レヲシマス。多分…イヤ、確カニ貴女ガ、盗ンダノハ我ダト察知シテヰマス。ソレガ爲ニ氣持チハモツト良イデス。”

あの頃、本當に下手な拜物ヘ徒だつた。その判ズボンを、だうしたらいゝか、また何處で貯藏したらいゝかも知らず、自分の(今や彼女だけの)體毓用衣料の袋に入れた。其れを使つて手婬したかつたが、彼女の汗の素リらしい匂ひを演tの匂ひで亂せることが怖かつたから、たゞその半ズボンを貯藏してゐて、其れが我だけの物であることと、我だけに利用せられるとの事實に甘んじてゐた。
あの日、彼女は學校に來て自分の袋から或る物が失せたと見つけた時、我は彼女の目で恐怖を讀んだ。それは死ぬる恐怖ではなくて生ける恐怖だつた。綫がもう、踏み越えられた。一年閧ノ彼女は、そんな彼女の「正しい」?念に反する行爲を行つてゐる者を作つたとの認識の恐怖だつた。我はそれが唯の氣の所爲では無くて眞實であると望んでゐた。いや、ちがふを得ざる。眞實にちがひなかつた。なぜならば、彼女だけが我が眞實であつた。
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