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戦国異伝供書
第七十三話 元服前その九
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「これはです」
「当家にとって悪いことでありますな」
「六角家は浅井家を滅ぼすと近江を完全に手中に収めることとなりまして」
「伊賀と合わせて百二十万石となり」
「当家にとって大きな脅威となります、しかも一向宗とも仲が悪くないので」
「若し六角家と一向宗は結べばですな」
「そして六角家が当家を狙ってきたならば」
 その場合はというと。
「当家は挟み撃ちになります」
「だからですな」
「浅井家には残ってもらいます」
 滅んでもらっては困るというのだ。
「どうしても」
「だからですな」
「その際はです」
「それがしが出陣して」
「浅井家をお助け下さい、そして」
「そうなるとですな」
「それがしが思っております」  
 浅井家は負ける、これが義景の読みであった。
「猿夜叉殿がどういった方でも」
「そうですか、では」
「その様に」
 浅井家とのことはとだ、義景は宗滴に話してだった。
 彼が去った後で和歌の書を読んだ、そうして自らも詠みその世界に耽溺するのだった。
 宋滴は義景の前を後にしてから彼の屋敷に戻った、するとすぐに剣の鍛錬をはじめたがその休憩の時に彼の家臣達に話した。
「近江に出陣はない」
「ありませぬか」
「そちらにはですか」
「宗滴様は出陣されませぬか」
「殿はするだろうと言われておるが」
 それでもというのだ。
「それはない」
「それは何故でしょうか」
「近江に出陣がないとは」
「あちらでは戦が起こらぬということでしょうか」
「戦は起こる」
 これはあるというのだ。
「必ずな、殿は浅井家が敗れるのなら助太刀として出陣せよと言われたが」
「浅井家は勝つ」
「そうなるからですか」
「当家は近江への出陣はない」
「そうだというのですか」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「当家はな」
「浅井家には出陣せず」
「それではですか」
「これまで通り一向宗に備えておく」
「そうなりますか」
「左様じゃ、当分当家が気をつけるべきは一向宗のみじゃが」
 若狭の武田家とは関係は良好だ、それなら尚更だった。
「何年か経てば織田家とな」
「あの家とですか」
「何かありますか」
「そうなりますか」
「間違いなくな、その時織田家とは戦うべきでない」
 決してという言葉だった。
「戦えば当家は滅びるであろう」
「宗滴様がおられてもですか」
「それでもですか」
「当家は織田家と戦えば滅びますか」
「そうなりますか」
「その時織田家は天下第一の家となっており」
 そうしてというのだ。
「そして勢力も何倍もの大きさとなっておる」
「だからですか」
「宗滴様でも敵わぬ」
「そうなりますか」
「そうじゃ、一向宗はただ百姓が武器を持っただけじゃ」
 彼
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