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問題はあるが
第一章

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                問題はあるが
 アッバース朝の宮殿においてまた処刑された者が出た、それで街の者達はやれやれといった顔で話した。
「ハールーン様はな」
「本当にすぐに怒られるな」
「そして処刑を命じられる」
「その場でな」
 まさに首を刎ねろといったその瞬間にだ。
「マスルール殿に命じられて」
「刀と敷きものは常に用意されている」
 処刑される者の首を刎ねる刀と処刑された者の血で床が汚れない様に処刑される者をその上に座らせる敷きものだ、マスルールが持っているのだ。
「もうすぐにだ」
「ハールーン様が命じられるとな」
「その場で処刑だ」
「またそうなったか」
「本当に処刑が多いな」
「ハールーン様がカリフになられてから」
「困ったことだ」
 バグダートの者達はこう話した、そしてだった。
 その彼ハールーン=アル=ラシードの暮らしは贅沢を極めていた、処刑だけでなく贅沢も話題になっていた。
 唐から来た商人達は彼の暮らしを見て話した。
「我等の国の万歳老より凄いな」
「そうだな」
「凄い贅沢だ」
「見事な宮殿に住んで」
 外装も豪奢で巨大だが内装もかなりのものだった、もうそこにあるのは世界中の富といった風だった。
「とんでもない服をいつも着ている」
「しかもその服がどれだけあるか」
「最高の食材を最高の香辛料で味付けした料理ばかりだ」
「いつもそれを山の様に前に積んで食べている」
「後宮、ハーレムには美女達がこれでもかという」
「その後宮も凄いものだという」
 彼等は後宮には入られないので噂話であった。
「唐の長安の後宮よりも」
「しかも夏はどの部屋も涼しいというが」
 宮殿のというのだ。
「全て氷を入れているせいだ」
「氷で涼を入れている」
「わざわざ遠くの山からバグダートに運ばせてな」
「早馬を乗り継がせて」
「そこまでして氷を手に入れてな」
「それでしているなんてな」
「唐ではそこまでするなぞ」
 それこそというのだ。
「滅多にないことだ」
「宮殿に美味いものをそうして運ばせたことはあるが」
「それでもな」
「幾ら何でもだ」
「ハールーン様の様なことはしない」
「途方もない贅沢だ」
「よくあそこまでの贅沢が出来るものだ」
 それが過ぎるのではないかとだ、彼等は話した。そして彼と戦っているウマイヤ朝の者達は遠くグレナダで話していた。
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