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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission1 カッサンドラ
(3) 特別列車スカリボルグ号~線路~???駅前ターミナル
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が欲しいだとか、人工でない食材の料理を食べたいとか、海を見たいとか。物欲もりもりだ。だが、そんな願い事をカナンの地で叶えては大精霊オリジンも泣くに泣けまい。

「なら、何故この審判に参加するんだ?」
「目的はあるけど、それはカナンの地に入るんじゃない。強いて言うなら、カナンの地を目指す上で避けて通れないモノ。それに出会うのがワタシの目的――ユースティアの生まれた理由」

 ユリウスは口元を隠して長考に入った。信用に値するか、受諾したとしてメリットはあるか、時折ユティを窺いながら計算しているのが手に取るように分かる。

「――いいだろう。その契約、受けた」

 よし――ユティは内心で大きく安堵した。ここで全盛期のユリウスに敵対されれば、ユティの目的達成はひどく困難なものになっていただろう。





 契約受諾の返事を最後に、ユリウスはユティと口を利かなかった。列車のスピードが緩やかになり、自然停車するまでにやっておきたいことがある。


 GHSを取り出してキーを高速で叩く。分史世界観測装置「クドラクの爪」から、分史世界の座標分析データをハッキングするのだ。
 開発者こそ別だが、装置は分史対策室の所管だった。室長のユリウスが侵入するのは容易い。これでしばらくはクランスピア側の道標探索を遅らせられる。操作ログにユリウスの痕跡が残るが、その程度なら構うまい。


 作業を終えてふと前を見ると、こちらを見ていたユティと目が合った。

「……まさかずっと見ていたのか?」
「見てた」
「楽しかったか?」
「退屈だった」
「なら見なければよかったのに」
「見ていたかったの」

 声のトーンが変わった。

「すぐそばで見ていたいって思ったの」

 今までのズレた返しとは異なる、真摯な言葉。赤ん坊のような蒼いまなざしがユリウスを射抜く。

「……そういう台詞は惚れた相手にでも言いなさい」
「言っちゃいけなかった?」
「俺個人としては、な」


 ――列車から二人が降りて、線路の上を最寄り駅目指して歩く間、会話はなかった。

 ただし、ユティは夜景や線路の写真を撮りまくっていた。撮影のたびに止まるユティを待って、かなりのタイムロスを強いられた。



 小さな駅に着いてから、駅員の巡視を潜って改札を超える。駅前のこれまた小さなターミナルに出てから、ようよう彼らは口を開いた。

「ユリウスはこれからどうするの?」
「しばらくは身を潜める。それから探し物だ」
「ワーカホリック」

 金茶のゆるふわヘアーをわしゃわしゃとかき混ぜてやった。きゃー、と下から悲鳴が聞こえたが無視だ。

「そういう君は。宛てはあるのか」
「ルドガーたちの様子見に行く。ルドガーにはこのあとまだ面
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