第二章
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「ラム酒位な」
「それ位はな」
「安い酒だしな」
「安いだけが取り柄かも知れないがな」
「それ位は出来るだろう」
「そ、そうだな」
クロケットは半分売り言葉に買い言葉でしかもここで支持を手に入れるべきだと判断してだ。ここは彼等の申し出を受けることにした。
それで彼等を演説の場の近くにある酒場に連れて行った、だが酒場に着いた時に彼はこっそり自分の立候補を支持してくれて今も付き添ってくれている友人に囁いた。
「実は持ち合わせがないのだよ」
「金のか」
「そうだ、ここはだ」
どうもと言うのだった。
「だから店の親父にな」
「ジョブさんにだな」
ここで友人は店にいる初老の頭の禿げた男を見た、その男が店の主であるジョブだ。
「頼むか」
「金は今度払うとな」
「いや、あの人はツケは嫌いだ」
友人はクロケットにこのことを即座に答えた。
「だからだ」
「それは無理か」
「それにこれだけの人数の酒代となるとな」
有権者達は店にごった返している、しかも酒場に元からいた客達も話を聞いてそれではとなっている。友人はそのことも見てクロケットに忠告した。
「ちょっとやそっとだとな」
「払うとか」
「金がなくなるぞ」
「そうなるな」
「だから君が持っているアライグマの毛皮の帽子をだ」
「あれをか」
「そうだ、金の代わりと言ってな」
その様にしてというのだ。
「ジョブさんに出すとな」
「いいか」
「そうだ、だが一回だけでは駄目だろう」
「なら何回もか」
「ジョブさんの目を盗んでな、自分の手に戻してな」
「また差し出すか」
「それを繰り返してな」
そうしてというのだ。
「酒代にすればいい」
「そうすればいいか」
「後で酒代は手に入れてだ」
本当にというのだ。
「支払えばいいしな」
「そこはそれか」
「そうだ、これでどうだ」
「そうだな、では一旦自分の家に帰ってだ」
クロケットの家も近くにある、これは彼にとって好都合だった。
それで彼は一旦家に戻りかつて彼が仕留めたアライグマの毛皮で作った帽子を持って店に戻り店の親父にその毛皮彼が自慢の獣の腕前で毛皮に穴を空けずに作ることが出来たそれを差し出して話した。
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