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渦巻く滄海 紅き空 【下】
三十二 蜘蛛の糸
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ても信じられるものではない。

カチャリ、と鍵がしっかり施錠された扉を確認したサイは、カブトが部屋から離れてゆくのを暫しじっと待った。
足音と気配が完全に遠のいたと把握してから、サイは室内を隈なく確認する。
自分を見張っている物等が無いとしっかり判断してから、サイは自身の荷物を手繰り寄せた。

その中に入っている巻物を確認している最中、ふと目についたのは絵本。
絵本に描かれた白い髪の少年を見るサイの脳裏に、そのモデルの人物が思い浮かぶ。


太陽の光さえ届かぬ地下。『根』の深く暗い地下の水柱に閉じ込められている兄の姿が過る。
水に満たされた柱でしか生きられない兄の為に、この任務、生きて帰らねばならない。

両開きから真ん中のページに向かって二人の少年の物語が始まる構成の絵本。
兄と弟が左右から武器を変えて敵を倒すという物語のモデルは、片やサイ自身、そしてもう一人は…。


「シン兄さん…」
「なんだい?」


ハッと後ろを振り返ったサイの背後で、カチャリ、と鍵が開く音がした。
反射的に身構えたサイの眼が大きく見開かれる。普段、感情を見せないその相貌には確かに驚愕の色が満ち溢れていた。

「シン…兄さん…?」


サイの視線の先。
其処には、木ノ葉にある『根』の地下の水柱に眠っているはずの兄の姿があった。































蛇の腹の内側の如き回廊。
その奥の奥の部屋で、彼女はカブトに頼まれたものを処理していた。

「火影直轄部隊暗部構成員のリストの写し…カブト先輩はよくこんなものを手に入れたな…」

ダンゾウからの命令でサイが大蛇丸に渡したもの。以前、同じ『根』の先輩に自室で渡された封筒の中身だ。
これでビンゴブックを作るように、という大蛇丸の指示はカブトが受けたものだが、それはそのまま彼女に託された。

カブトは今、新たにやって来たサイという人物の案内をしている。
そのサイの嘘くさい笑顔を遠目で認めていた彼女は、胡乱な目つきで封筒を眺めた。

「アイツ、胡散臭い感じだったけどな…。信用できんのかよ」

カブトの研究室で、顔を顰めていた彼女────アマルの耳に、この場にはいないはずの人物の声が不意に届いた。

「誰が胡散臭いですって?」
「…べつにアンタのことじゃないよ」

聞き覚えのある声の主に、アマルは顔を上げて苦笑する。
三つ編みにした長い髪をなびかせて室内へ入ってきた彼女は、アマルの返事に「なら、いいけど」と肩を竦めてみせた。


「お早い到着で」
「十五・六歳の男の遺体のストックが足りない、ってカブトさんから聞いて、飛んできたのよ。緊急だって言
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