第二章
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「僕個人は男らしくなりたいよ」
「その辺り難しいな」
「どうにもね」
「自分はそうありたいと思っていても」
「自分自身は違うとかね」
「こうしたことでもあるな」
「実際にね」
クラスメイト達は太一本人の言葉を聞いてしみじみと思った、とにかく太一自身は自分の女の子そのままの顔は好きではなかった。嫌いかというとそこまでは至らなかったが。
そんな中で文化祭となりクラスの出しものは劇となったが。
その劇は趣向を凝らしたもので男子が女の女子が男の役を演じることになった。演目は真夏の夜の夢であり。
太一はキャスティングを見て憮然とした顔で言った。
「僕がティターニャって」
「嫌か?」
「メインの役だけれど」
「妖精の女王でな」
「凄い美人の役よ」
「だから僕が女の人の役は」
それはというのだ。
「どうかってね」
「けれどそうした劇するって決まっただろ」
「ホームルームでな」
「それだったら仕方ないだろ」
「それで富田君も選ばれたし」
「正直僕は普通の劇でよかったと思うよ」
実際に太一はそちらを主張した。
「それでも決まったし」
「普通にやっても面白くないだろ」
「こうしたことは趣向を変えてよ」
「それでお前ならって思ってな」
「皆選んだのよ」
「そうなんだね、選ばれたら」
それならとだ、人のいいところのある太一としてはだった。
不本意ではない、それでもこう皆に言った。
「それならね」
「やってくれるか」
「そうしてくれるのね」
「ティターニャやってくれるか」
「演じてくれるのね」
「そうさせてもらうよ」
こう言ってだった。
彼は実際にティターニャの役を引き受けることにした、まずはシェークスピアの原作から読んで勉強して。
台本を読み稽古もした、そこで言うのだった。
「結構面白いキャラだね」
「この作品自体が面白いしな」
「いい作品よね」
「ファンタジーと恋愛の要素が絶妙な頃合いになっていて」
「展開も王道だし」
「最後もいい感じで」
「面白いよ」
太一は真顔で言った。
「今回の出しもの以前にね」
「いいよな」
「読んでも演じても」
「そうしても」
「いい作品ね」
「うん、これなら」
是非にとだ、太一は言った。
「ティターニャも演じられるよ」
「というかな」
脚本を担当している文芸部所属の男子が言ってきた。
「元々シェークスピアは全部男が演じていたんだよ」
「歌舞伎みたいに?」
「歌舞伎は最初女の人がやってただろ」
「出雲の阿国だね」
「けれどそれがいやらしいって言われてな」
「幕府が禁じたんだよね」
「それで若衆歌舞伎になったけれどな」
文字通り若い男達が演じたのだ。
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