第一章
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非武装中立
ある女性学者がまたテレビで喚いていた。
「F−15は無駄な買いものだったのよ!」
「あの、抑止力って知ってます?」
すぐに番組の司会者から突っ込みが入った。
「それは」
「わかってるわよ」
「だったらそうは言えないですよ」
「実際に使わなかったから言ってるのよ!」
赤く染めた茸カットの頭に眼鏡をかけた長方形の顔である、派手な服を着ていてメイクも同じだ。テレビではよく知られた顔だ。
その顔で司会者に対してまた喚いたのだ。
「それで終わったじゃない!」
「だから抑止力なんですよ」
司会者は学者に呆れた顔でまた言った。
「それは」
「あるからっていうのね」
「そうですよ、若しF−15がなかったら」
そうだったらというのだ。
「本当に攻められたかも知れないですよ」
「なくても攻められなかったわよ!」
「そう言える根拠は?」
「平和憲法よ!」
これだというのだ。
「これがあるじゃない」
「いえ、それがあってもですね」
司会者の呆れ顔はさらに凄いものになった、それは他の番組出演者も同じだった。見ればこの学者だけが意見が全く違う。
「攻める国とかテロリストもいますよ」
「テロリスト?」
「過激派とかカルト教団とかいるじゃないですか」
「そういったのに戦闘機必要だっていうの?」
「戦力は必要なんですよ」
そういうことだというのだ。
「抑止力の」
「だから平和憲法あるじゃない」
「テロリストが平和憲法守りますか」
「守るわよ」
「そんなの守らないからサリン撒かれたんじゃないですか」
こうしたやり取りが行われていた、それを見てだった。
緒方颯はテレビを前にして友人の長島啓永に言った。二人は今颯の家でゲームの合間にたまたま日曜の昼にその番組を観ていたのだ。
颯の外見は太く長い眉に左で七三に分けた黒髪、おもなができりっとした顔である、目が小さめでやや細く鼻が目立っている。唇は微笑んでいて背は一七八程だ。
啓永はあどけない顔立ちで黒く鳥の巣を思わせる癖毛の黒髪である。眉は黒くはっきりしていて童顔で目は億二重の横に長いアーモンド型だ。鼻は少し低めで大きめの口とピンク色の唇が目立つ。背は一七五程だ。二人共すらりとしている。
「このおばさん学者だよな」
「そうなんだよね」
啓永はこう颯に返した。
「職業は」
「そうだよな」
「それで何でなんだ?」
颯は首を傾げさせてまた言った。
「この人こんなに頭悪いんだ?」
「いや、頭悪いって」
「言い過ぎか?」
「はっきり言い過ぎだよ」
これが啓永の返答だった。
「事実よ」
「ほらな、事実だろ」
「事実でもだよ」
こう颯に言うのだった。
「それはさ」
「事実を言っ
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