第三章
[8]前話
「その恰好何!?」
「何って寝るから」
だからだとだ、愛衣は自由に何気なく答えた。
「もうね」
「その恰好なんだ」
「寝間着に着替えただけよ」
「着替えただけって普段は」
自由は愛衣に驚いた顔のままさらに言った。
「パジャマなのに」
「今日はちょっと趣向を変えて」
それでとだ、愛衣は酔って真っ赤になっているが落ち着いた顔で答えた。
「それでなの」
「その恰好なんだ」
「駄目かしら」
「駄目じゃないけれど」
それでもとだ、自由は愛衣に答えた。
「その恰好は」
「一緒に住んでいたら下着姿だって見てるじゃない」
愛衣の返事は実に湿気ない、自由とは正反対に。
「そうでしょ」
「それはそうだけれど刺激が違うよ」
「刺激が?」
「そうだよ、その恰好は僕としては」
どうしてもというのだ。
「刺激が強過ぎて困るよ」
「そうなの」
「だからどうにも」
「それじゃあいつものパジャマに戻るわね」
「そうしてくれたら嬉しいよ、本当にその恰好は」
上はブラウス、そして下は何も穿かないというスタイルはというのだ。
「僕には無理だよ」
「自由君にとってはなのね」
「刺激が強過ぎてね、思わず襲いそうにもなるし」
「同棲してるから襲っても別に」
「だからそういうのじゃないから、紳士でないと」
こうもだ、自由は言うのだった。
「本当にね」
「そこ自由君のこだわりね」
「そうだよ」
「そう、だからね」
「今はなのね」
「パジャマで頼むよ」
二人で話してだ、そのうえで。
愛衣はパジャマに戻ると自由は穏やかになった。そうしてこの夜は二人で穏やかなベッドの中での時間を過ごしたが。
後日愛衣が夜に今度は浴衣姿になった、すると今度もだった。
自由は驚いてそうして愛衣に言った。
「それもかなり」
「刺激強過ぎるの?」
「僕には。しかも愛衣ちゃん和風だから」
愛衣の顔立ちのことも言うのだった。
「余計に。押し倒しそうになるよ」
「普通にそう来たら私だって反撃するけれど」
その空手や合気道でというのだ。
「けれど自由君なら何もしないわよ」
「だからそういう問題じゃないから」
「紳士的でないとなのね」
「僕は無理だから」
「それでなのね」
「頼むからその恰好もね」
浴衣姿、それもというのだ。
「控えてね」
「じゃあまたパジャマに戻るわね」
「そうしてくれると助かるよ」
今回もこう言うのだった、とにかく自由は愛衣の何気ないことに戸惑ってばかりだった。彼女に悪気がないだけに。
天然で 完
2019・7・15
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