第三章
[8]前話
下僕の一人に短刀で林檎を割らせた、するとその中はというと。
多くの虫がいた、それでカリフは言った。
「二人の占いの結果は正しかった」
「私の占いもですね」
「そうだ」
こうマーシャルに答えた。
「それがはっきり出た」
「そう言って頂けますか」
「林檎ではあるが」
まずはマラームの占いが正しいとした。
「しかし中に多くの虫がいるとな」
「生きものですね」
「どちらも正しい」
まさにというのだ。
「前の牛の時と同じくな」
「はい、占いはです」
「実際にです」
二人共カリフにすぐに言った。
「同じ事柄を占いましても」
「それぞれ違ったりもします」
「同じ結果が出ましても」
「それでも」
「そうだな、子牛は黒毛でだ」
そしてというのだ。
「白いぶちがあったがな」
「毛の先に」
「左様でしたね」
「しかしその尾が額に当たってな」
そうなっていてというのだ。
「確かに額に白い星があった、そして今の林檎もじゃ」
「確かにです」
「果物であり」
「そして生きものでもありました」
「中に虫が多くいたので」
「二人の占いは当たった、だからな」
カリフはそれ故にと話した。
「二人に多くの褒美をやろう」
「有り難きお言葉」
「それでは」
マーシャルもマラームもカリフの言葉に笑顔で応えた、そして実際に彼等は多くの褒美を得た。イスラムの歴史にある占いの話の一つである。同じものに対して占われ同じものが出ても違う言葉が出ることもある、占いというものはそう考えると実に難しく面白いということを表している話と言えるであろう。
占い師の林檎 完
2019・6・11
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