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異能探偵・番長五郎( #いのたんちょう )
1-1 番長五郎、登場
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 長五郎は少年を背負うと、いともたやすく列車から夜空へと身を投げだした。二人の体は、そのまま闇へと溶けていった。

 ***

 数日後。依頼人の少女と、彼女の目的だった例の少年が旅立ち、久々に二人だけとなった長五郎の事務所。しかしその空気は、近年探索が進んでいるという酷寒の極地よりも冷たくなっていた。むしろここからが開戦と言えた。

「さぁて、反省会といこうか」

 シャツとズボンに身を固めた、眉目秀麗な相方。今は目の笑っていない笑顔で長五郎を見ていた。長五郎の背中には嫌な汗が滴っている。彼自身、ここ数日の行動が相方の逆鱗に触れているのは分かっていた。

「先走ってあの少年と立ち会ったせいで一時は心肺が停止するほどの重傷を負い、意識を取り戻すや否やボクを脅して答えをもぎ取り脱走。おまけに事務所の経費をあの子達にほとんど渡してしまう。そもそもキミのツテ頼りの密出国だから帰れる保証もない。さて、言い分はあるかい?」
「え、ええと……」

 応接用の机を挟んで、一気にまくし立てる相方。長五郎は明後日の方向を向いて思案していた。とはいえ、とうに結論は出ていた。自分と相方では頭の回転が違う。屁理屈をこねたところで、相方に論破されるのは目に見えていた。

「特にないです……」
「よろしい」

 長五郎は冷たい床に自主的に正座し、うなだれる。こういう時の相方は、下手に抵抗するよりも一度折れてしまった方が話しやすい。長五郎の経験則だった。事実、相方の殺気はいくらか和らいでいた。

「まあボクは馬鹿じゃないので、一個一個の事態はある程度は想定していたのだけど……。いっぺんに起こされるとどうしようにもない。おかげで、あの少年をこっちへ手引きした人間とかの調査までは手が回らなかったよ」
「う」

 だが相方の舌は鋭さを失ってはいなかった。長五郎自身も分かっていた。この程度で彼女がおさまらない。故に、先手を取り続けなければならない。

「すまん。勝手に突っ走った」

 長五郎は冷たい床に手を置き、座礼をした。まずは謝罪が必要だった。よろしいと声が聞こえるまで、長五郎はそうした。まずは意志を見せる。それが最善だった。

「まあ良しとしよう。ボクだってキミとの関係にヒビを入れたいわけじゃあないからね。そもそも一つ一つの行動はキミの性格からして妥当だ。反省は必要だが、修正はいらない。むしろ早急な課題は、事務所の財政が危機的状況にあることだ」
「いっ!?」

 長五郎が驚きの声を上げる。一応、最低限残しておくべき金額は計算していたはずだった。なのにどうして。理解が追いつかない。

「まあ正座は良いから掛けなよ。ここからは膝を突き合わせて話をしたい」

 外国(とつくに)の血が混じったという金の短髪を揺らして、相方が
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